全旭川短歌大会が十月二十七日、勤労者福祉会館で開かれた。旭川歌人クラブ(西勝洋一会長)と旭川文化団体協議会の主催。あさひかわ新聞などの後援。

 年に一度、同クラブの会員が集い、優れた短歌を選ぶ歌会は五十五回を数える。

 五十四人(当日出席は五十人)が参加。全員が選者となって、作者名を伏せた五十四首の中から、一人五首を選んで投票し、獲得票の多い歌に賞を贈る。

 投票の結果、最高賞の旭川市長賞には、斉藤純子さん(69)の歌「時々は充電をする亡き姉のメールが残る古き携帯」が選ばれた。

 斉藤さんは、「歌人クラブに参加するようになって十七年です。思いもしない賞を初めていただきました。去年亡くなった姉のメールが、今は使っていないガラ携に入っています。普段は忘れているんですが、ふと思い出して充電をすると、次から次に姉からのメールが出てくるんです。そんな思いを詠みました」と話した。

 あさひかわ新聞賞には、鎌田章子さんの「『また来る』と言えば『いつ来る?』と返す母にわれが誰かは分かつてをらず」が選ばれた。鎌田さんは、偶然、昨年も小社賞を受賞している。

 受賞者には、賞状と盾が贈られた。そのほかの受賞者と受賞作は次の通り。

  • 旭川市教育長賞 小松満子「青春を戦中戦後に過ごしきて令和に念う子孫の平和」
  • 旭川文化団体協議会賞 並木美知子「流れゆく雲見つめればわたくしが流されてゐる 錯覚とあそぶ」
  • 旭川歌人クラブ会長賞「知らせ受け石北峠をひた走る授かる命を両手(もろて)にふれんと」
  • 北海道新聞社賞 犬飼蕃「手を引いて買い物したる亡母の手の小さき温もり今も残れり」
  • NHK旭川放送局長賞 西勝洋一「リスボンの酒場でファドを聴きたると斎藤君から絵はがき届く」
  • 旭川歌人クラブ奨励賞 智理北杜「さびしさも糧に生きよう朝露はやがて陽を浴び消えゆく運命」
  • 旭川歌人クラブ優秀賞 柴田えみ子「一才で母亡くせし娘成人し形見のショールそっとかけやり」
  • 同 長谷川光子「うつむけるクリスマスローズ花心よりほたりほたりと哀しみを吐く」
  • 旭川歌人クラブ佳作賞 柊明日香「昏々と眠れる姑(はは)の病室の窓をよぎりて鳩が飛びゆく」
  • 同 井上敬子「裏庭にあかりを点すミニトマト寒露ま近の夕暮れの中」