前週の小欄について、読者からファクシミリをいただいた。三月一日付北海道新聞朝刊に掲載された「電気事業連合会」の広告に対して、「石坂浩二、いい加減にしろよ」と書いた拙文に対するご意見である。「CO2温暖化論の本音が見えてきた」とタイトルを付した全文を以下に。

 ――3・10の「直言」について、電気事業連合会の広告はみていないけど、私は元々、CO2温暖化論なんてナンセンス、21世紀最大のフェイクニュースだと思っている。

 CO2が温暖化の主因とする論が、いつ頃から出てきたか、1980年代後半……チェルノブイリ原発事故の半年後から、CO2悪玉論が出てきた。

 チェルノブイリの事故により、世界的に原発の新設に急ブレーキがかかり、化石燃料による発電が見直されるようになった。

 それに危機感を持った原子力業界は、何としても火力発電を阻止したい。その急先鋒が、政治的スポンサーが原子力業界である、元・米国副大統領のアル・ゴアである。彼の有能な弁舌は、たちまち世界を騙すことに成功した。

 気候変動の原因は、何百もの要因があるのであって、そのうち一つだけを取り上げて主犯とするなど、あまりにも非科学的である。CO2が温室効果があるとしても、赤外線吸収率は水蒸気の6分の1であり、大気の平均濃度は50分の1である。CO2が気温を上げるとしても、今の2倍、3倍になったとしても目くそ、鼻くその量でしかない。
 CO2温暖化論は、原発推進のキャンペーンに利用されるだけ。再生可能エネルギーというけれど、化石燃料のコストにはかなわない。もしコストで勝負しようとすれば、海や山に甚大な環境破壊を引き起こすと思う。

 ところで、CO2を一番出しているのは火力発電所だろうか? 私は兵器だと思う。軍隊の使用している化石燃料は、発電所の比でないだろう。なぜか、こっちのCO2は問題にされていないが、いかがなものか。(引用終わり)

 様々な異論があるだろうが、アル・ゴア・元米国副大統領を追ったドキュメンタリー映画『不都合の真実』(二〇〇六年)が、その後の地球温暖化阻止と原発再評価のキャンペーン役を果たしたのは間違いない。

 「フクシマ」を教訓として、世界の潮流は一気に脱原発に向かったのに、事故を起こした張本人・日本は、あろうことか、原発輸出を「経済成長の柱」に据えた。笑えないブラックユーモアは、当然のこと破綻。政府が主導した原発輸出プロジェクトはことごとく失敗した。

 そして恥の上塗りの東京オリンピック招致は、新型コロナウイルスの襲来で、潰える寸前である。世界に向けて「(福島の状況は)完全にコントロールされている」と大ウソをついたり、国内向けには「復興五輪」などと粉飾して、国民を騙してどうにかここまでたどり着いた。ああそれなのに。お天道様はちゃんと見ているのかな、などと思ったりする。いささか長い枕はここまで。