旭川工業高等専門学校(春光台二ノ二)の専攻科生十一人が、授業を通じてヘアケア製品の開発に取り組んでいる。

 市内でヘアサロンやコスメ事業を展開するマーヴェラスの代表・志水洸一さん(35)が、オイルを発酵させて分子をナノレベル(細かい粒状)に分解するという同社の特許技術を何かに応用できないかと、同校の松浦裕志准教授に相談したのがきっかけ。松浦准教授は「私ひとりでは志水さんの熱い思いを受け止め切れないと考え、マーケティングが専門の阿部先生(同校准教授)に声をかけました」と話す。

 また、話が進む中で、植物由来で工業分野や食品、化粧品など多様な分野に応用できる「セルロースナノファイバー」の活用も発案された。これは木材から得られる木材繊維(パルプ)をナノ化した世界最先端のバイオマス素材で、旭川にも拠点をもつ日本製紙から提供を受けている。

 資金面では、旭川市の助成のほか、旭川しんきん地域振興基金などの協力を受けるという。志水さんは「今回のプロジェクトは、旭川市内の産・官・学が連携して取り組めるのも面白いところ」と話す。

 プロジェクトが目指すのは、この「ナノオイル」と「セルロースナノファイバー」を掛け合わせた、シャンプーとトリートメントの開発・商品化だ。使用するオイルは、ヒマワリやエゾシカ、ウマなど、すべて道産の素材から抽出したものを用いる。阿部敬一郎准教授は「セルロースナノファイバーが水分や油分を抱えたまま髪の毛にくっつけば、保水性や艶やかさが取り戻せるのではないかと考えました」と説明する。

 学生らはこれまで、オイルの種類や組み合わせを変えるなど、様々なパターンで洗った髪を触り、「サラサラ」「艶やか」「しっとり」など十項目の〝官能テスト〟を約一カ月半繰り返してきた。今後は、官能テストのデータ解析のほか、髪の毛の保水量を調べる装置の開発に進んで行くという。

 志水さんは「コロナ禍でお客様の髪を直接ケアしてあげられなくなった時に、もっと家で出来ることがあれば良いのだと気づかされました。特に女性は、家でも髪がキレイになることで、気持ちも豊かになります」と語る。

 阿部准教授は「ホームケアでも、美容室で施術したような質感をいかに持続できるか、が重要になってきます。参加している学生たちの卒業までに発売できれば」と期待を込める。