映画の1シーン

 アイヌの血を引く十四歳の少年の成長を通して、現代を生きるアイヌを映し出す映画『アイヌモシリ』(福永壮志監督/二〇二〇年、日本・米国・中国、八十四分)の上映が二十日(金)から、ディノスシネマズ旭川(大雪通五)で始まります。

 主人公のカントは、阿寒湖畔のアイヌコタンでアイヌ民芸品店を営む母親のエミと暮らす中学生。カントは、一年前の父親の突然死をきっかけに、アイヌ文化と距離を置くようになりました。友人たちとバンドを組んで練習に熱中する日々を送り、進路やアイデンティティーに悩みながら成長していくカントを描いた作品です。

 主要キャストは、カント役の下倉幹人をはじめ、現地に住むアイヌが務め、三浦秀子、リリー・フランキーらがゲスト出演しています。

 監督の福永壮志は、北海道伊達市出身。二〇〇三年に渡米して映像制作を学び、ニューヨークを拠点に活動後、一九年に拠点を東京に移しています。初の長編映画『リベリアの白い血』が国内外で高く評価され、『アイヌモシリ』は二作目。

 阿寒湖のアイヌの人々の協力のもと、企画から五年をかけて制作された本作は、第十九回トライベッカ映画祭の国際コンペティション部門で審査員特別賞を、第二十三回グアナファト国際映画祭の国際長編作品部門で最優秀作品賞を受賞しました。

 十二月三日(木)まで。公式サイト(http://ainumosir-movie.jp/)。

福永壮志監督からのメッセージ

 映画『アイヌモシリ』は、阿寒に住むアイヌの少年が、父親の死や自分のルーツと向き合いながら成長していく話です。出演いただいた阿寒アイヌコタンのみなさんはじめ、たくさんの方々のご協力でなんとか完成しました。

 “アイヌを題材にした映画”というと、難しい話ではないかと気構える方も多いかもしれませんが、誰にでもきっと共感できるところがある少年の成長物語ですので、気軽にご覧いただけたら嬉しいです。この映画が、少しでも多くのみなさんの心に届くことを願っています。