花を咲かせるのが難しいと言われるカネノナルキが、佐野忠雄さん(90)宅で開花した。苗から育てて六十年目になるという。

 カネノナルキは多肉植物で、葉の形が硬貨に似ていることから、この名がついた。縁起物として好まれる木だが、花が咲くことはまれで、大株になるまで長い期間を要する。

 「毎年土を替えたり、肥料をやったりして、五年前にようやく花が咲くようになりました。水のやり方や温度の管理にコツがいるんです。それから毎年十一月ごろに花が咲いています。この樹は今年で六十歳です」と話す佐野さん。元国鉄マン。若いころから、様々な植物を育てるのが趣味だったという。品評会に出すキクを育てたり、大きなヒョウタンを作ったり、砂漠のバラを育てて、三十㌢を超える大きな種を採ったこともあった。

 九十歳になった今でも、庭の様々な植物の手入れが楽しみだという。「若いころはホームセンターなんてないですから、自分で土を探したり、その辺に落ちてる馬糞を利用して肥料を作ったりしていました。誰かに習ったりするのではなく、試行錯誤してやるのが面白い。こつこつ何かをするのが好きなんですね。真面目だから」と笑う。

 「カネノナルキの花は寒い時期にしか咲きません。だから、温かくなるにつれ、花は落ちていきます。でも、春になれば今度は庭の木や花の手入れができます。今から春になるのが楽しみですね。そしてまた、冬にカネノナルキの花が咲くのを見たいと思っています」と元気に話す佐野さんだ。(作田穂菜美)