国際家具デザインフェア旭川(IFDA)開催委員会(桑原義彦会長)は九日、デザインコンペティションの入賞作品を発表した。
 IFDAは一九九〇年から三年に一度開かれており、今回で十一回目。昨年開催予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期となっていた。

 コンペティションには世界三十七カ国から、五百八十八点の応募があった。最終選考となる本審査を八日、旭川、デンマーク、ニューヨーク、香港をオンラインでつないで行い、審査員五人の三時間以上におよぶ審査を経て、各賞を選出。渡辺賢さん(40・神奈川)の「cubicle(キュービクル)」が最高賞のゴールドリーフ賞に輝いた。壁面を備えたデスクとスツールがセットになった作品で、ナラ材のベージュとライトブルーの色合いが、見た目にも軽やかな印象を与える。

 審査委員長の建築家・藤本壮介さんは、「デスクに半分の部屋のようなものがくっついている作品。座ってみると部屋ほど閉ざされるわけでなく、軽やかに外に開いていながらも、自分の世界が確保できるという、人や社会との距離感が可視化されている。つながることと離れることの間にある自分の世界を、自由に行き来できる個人のあり方のようなものが無意識に表現され、今の状況の中で輝きを放っていた」と説明した。

 また、シルバーリーフ賞に溝口瑛さん(36・福岡)の「三本脚のドロワー」、ブロンズリーフ賞に佐藤邦彦さん(35・神奈川)の「Molecule(モレキュール)」、今回新設された旭川ケベック友好賞に平山万喜子さん(40・京都)の「フラットチェア」が選ばれた。

 藤本さんは、「コロナ禍であぶり出された『人間の本質』というものに、以前から触れていた作品が最終的に上位になったような気がしている。また今回の審査を通じて、改めて家具が持つ自由さや可能性を実感した。歴史・伝統の継承と未来を切り開くという二つが、高い次元で組み合わさっているのがIFDA。今後も世界のデザイナーに、勇気とチャンスを与える場であってもらいたい」と講評した。(東寛樹)