忠別川の河畔で、ミズバショウが可憐な姿を見せ始めた。「毎年、二月中旬ごろに雪の割れ目から芽を出し始め、四月の初旬ごろから花を咲かせ始めます」と、徒歩で三十分ほどのところに住む北島惇二さん(79)は話す。

 北島さんは一九八三年、大正橋上流左岸でハンノキ林の下の湿地にミズバショウ二十数株を確認した。その後、ミズバショウの生態調査や保全を進め、現在約九十株まで増えた。

 二〇〇九年から自宅の庭にビオトープ(人工の池)を作り、ミズバショウの種を採取し、そこで鉢栽培を試みた。苦労して育てた結果、ミズバショウは種を植えてから花が咲くまで五、六年を要することが分かった。

 忠別川の湿地に咲くミズバショウを四十年近く観察してきた北島さんは、「カモやヤマバト、ネズミなどがミズバショウを食べるのを見ました。自宅のビオトープで育てたミズバショウも数株、特定の場所に移植したところ、毎年、美しい仏炎苞(ぶつえんほう=白い花のように見える部分)を見せるまで成長しているものもあります。ミズバショウの寿命は四十年と言われています。小さな花にも一つの命があります。大事に見守り、残していきたい植物のひとつです」と笑顔で話す。(佐久間和久)