携帯電話をしながらATMを操作している八十歳代の男性を見て、「もしかして、特殊詐欺では?」と見抜いて被害を未然に防いだとして旭川東署(河田啓治署長)は十六日、市内の会社役員・尾谷美姫さん(37)に感謝状を贈った。

 三月十五日午後七時ごろ、尾谷さんはイオン旭川永山店(永山三ノ十二)にある旭川信金のATMを利用しようとして並んでいた。ATMの前では高齢の男性が携帯電話で話しながら操作している。耳に入ってきたのは、聞きなれない「あおぞら銀行」という名前。そして、「今日までに三十万円を振り込まなければ、請求額が大きくなる」という話だった。

 尾谷さんは、思い切って男性に声をかけた。「電話を一度切りましょう」と。だが、男性は電話に一生懸命で取り合ってくれない。もう一度声をかけたが同じだった。子どもの食事の時間だし、仕事も残っていた。尾谷さんは一度は出口に向かったが、どうしても気になり、もう一度戻って、イオンの従業員に男性を説得するよう伝えた。すると男性はようやく携帯電話から耳を離し、説得に応じて被害を免れる結果に。

 尾谷さんは感謝状を手に、「犯人が捕まったわけでもないから感謝状なんて…と思いましたが、主人が『すごくいいことをしたんだよ』と言ってくれましたし、周りの人にこうしたことが知らされれば、犯罪の防止につながるかと思って、いただくことにしました」とはにかみながら話した。(工藤稔)