近文町20丁目・TEL76-5508

 七条緑道にあった、知る人ぞ知るコーヒー専門店「たく」。昨年十一月二十一日、近文町二十丁目、JR近文駅の真ん前に、素敵な建物を新築し、移転オープンした。

 緑道の時代も、「三人で入ろうと思ったら、『うちは小さな店なので』って、断られてしまった」などという噂を時々、耳にした。そうです、オーナーの中川拓也さん(43)は、コーヒーにも、お店にも、確固とした“理念”を持っている。いい意味で「変わり者」なのだ。

 新しいお店には、中川さんのそうした“珈琲哲学”が随所に表現されている。一階には、外を眺められるカウンター席が三つと、二人掛けテーブル席が二つ、そして四人掛けテーブル席一つ、合わせて十一席。

 一階奥の畳敷きの和室(四人まで)と、二階の秘密基地のような「アトリエ席」(三席)は、予約制。アトリエ席は三席で、窓からJR函館本線と近文駅、線路を渡る陸橋を一望できる。いずれも、一人で使うと、一時間五百円、二人以上だと一人三百円。「アトリエ席から電車をぼんやり眺めたり、夜はサンタ・プレゼントパークの夜景がきれいですよ」と中川さん。

 喫茶店巡りが趣味だった。高校卒業後、喫茶店の設計がしたくて、札幌の美術専門学校に進んだ。ちょうど、コンピューターを使って設計・製図するキャドが普及する時代。職人気質の自分には向いていない、と思った。

 札幌の宮越屋珈琲で働いていたとき、大きな交通事故を起こした。三年間、仕事ができない状態だった。九死に一生を得て、社会復帰を果たしたとき、「これは、何かやりなさいという啓示じゃないか」と考えた。

 旭川の喫茶店やレストランに勤めた後の二〇一一年、七条緑道に「旬の珈琲 たく」をオープン。焙煎した豆の販売を中心に、七年半。そして、小学生から高校までを過ごした近文に、理想のお店をつくったというわけだ。

 「基本的には、豆屋ですから」と中川さんは言う。豆の注文が入ると、少し余分に焙煎して、来店したお客にも飲んでもらう。だから、例えばインドネシアの「SGマンデリン」がいつでもお店で飲める、という訳ではない。

 「子ども同伴はお断りしています。ここは大人が来る場所。子どもが入れる店はたくさんありますから、そこを選んでもらえば」。変わり者ぶりは健在だ。

 店で飲むブレンド各種(中・中深・深)、ストレート各種、いずれも一杯四百五十円。毎朝焼くバターロール(二個二百円・飲み物とセットで五十円引き)、生チョコみたいなガトーショコラ(三百円・同)、チーズみたいなチーズケーキ(同)は、もちろん自家製。

 もう一つ。100年前のロイヤル・コペンハーゲンなどのコレクションが、さらに見栄えがするようになった。
 月曜定休。営業時間は午前七時~午後七時。(本紙・工藤稔編集長)

ケロコのひとことメモ

 緑道にあった「たく」。家から近く、いつも行っていました。朝7時から開いていたので、ゴミ出しのついでにコーヒー。このコーヒーが本当においしい。

 微妙で絶妙な焙煎で、いつも私好みのコーヒーを入れてくれる。朝、起きたら緑茶を飲むが、「たく」の空間でゆっくりコーヒーを飲むのは特別感がある。

 その「たく」が移転してしまった。緑道にあった時は、街路樹の景色が季節の移り変わりを教えてくれた。今度の景色は近文駅。この景色がまた落ち着く。いい所を選ぶねぇ。

 新店舗も素敵です。ぜひ行ってみて下さい。

2019年01月22日号掲載