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 昔から誰でも知っている旭川の菓子と言えば、文句なく旭豆。道産大豆とてんさい糖、そして抹茶だけが原料という、こんな素朴な味が今も残されているなんて、まさに奇跡的。あのインターネットのウィキペディアでも、一㌻を割いて歴史を紹介しているほどだ。

 北海道の特産物を使って、だれにでも好まれる菓子を――と、旭川の住人片山久平が旭豆を誕生させたのは明治三十五年のこと。それから一世紀。伝統の味は昭和三十年に共成製菓(稲葉久美子社長)に引き継がれ、現在も明治時代に建造されたレンガ造りの旧倉庫を工場にして作り続けられている。

 キャッチフレーズは〈素朴な味です。大豆の香ばしさ ほどよい甘さ 抹茶もうれしい旭豆〉。缶入りの容器などに使われているアイヌ女性のデザインも昔通りだ。戦前、陸軍第七師団があったころ、兵役を終えて故郷に戻る若者はみな、この旭豆を土産に持ち帰ったという逸話も残されている。

 現在は、旭豆のほかバター豆、ハッカ豆、黒糖豆、ワイン豆など様々なバリエーションの豆(どれも百九十㌘三百五十円)を販売している。最近は、健康志向からいり大豆(しょうゆ、うすしお、海苔わさび味各百七十㌘三百五十円)も伸びている。どれも、ちょっと大きめで甘みが強いという音更町産の大振袖大豆を使っているのが味の決め手だ。

 しかし、稲葉健一常務によると、やはり売り上げは旭豆が九〇%を占める人気。洋菓子などの攻勢で最盛期と比べると売り上げは一桁違うそうだが、本州のデパートなどの北海道フェアでは今も引っ張りだこなのだとか。「豆菓子と言えば大半はピーナッツを使ったもの。大豆というのは昔から全国的にも珍しく、買ってくださる方が多いのではないでしょうか」と稲葉常務。

 営業時間は午前八時~午後五時。定休日は土、日祝日。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ

 昔、札幌に住んでいた時、おじさんが旭川にいた。たまに遊びに来るのだが、その時のお土産は、必ず旭豆。私の中では、旭川イコール旭豆だ。

 それが今は何となく、影が薄くなっている。他にも美味しいお菓子がたくさんあるせいだろうが、何だかもったいない。

 この前、久しぶりに食べたけど、やっぱり美味しい。ショリショリしていて、いくらでも食べられる。
 旭川でとれる大豆とビートを使ってできた旭豆。旭川のお土産と言えば旭豆、と言われるようにまたなればいいな。

2021年12月14日号掲載