早朝、鍬を手に畑に出る。家人は家の周りの雑草取り。「去年、三十分で終わった仕事が今年は倍かかるな」と私。「そうよ。去年できなかったことが今年はできる。来年は、もっとできるんだものね。未来があるって、素晴らしいわ。りーちゃんがうらやましい」と家人。四歳になった孫の話である。「そんな未来がある子どもを万単位で殺しているんだからなあ。どんな言い訳したってダメだよなあ…」。

 国連児童基金(ユニセフ)の発表(四月十八日)によれば、パレスチナ自治区ガザで昨年十月七日にイスラエルの軍事侵攻が始まってからの死者が三万四千人以上に上り、そのうち一万三千八百人が子どもだという。六月の朝の爽やかな空気が、いきなり重くなる。ウクライナの戦争も同じだが、平和な島国に暮らす私たちは、この殺戮をどのように捉え、どう考えれば良いのだろう。

 思う。米国やEU諸国と日本が決定的に違うのは、戦争放棄を掲げる平和憲法を持っていることだ。米国に追随して武力で解決を図るのではなく、外交によって停戦を目指すよう各国に呼びかけることができるはずだ。「そんな理想論を」と批判する向きもあるだろう。だが、それこそがアジア・太平洋各国に二千万人以上とも言われる死者を含む史上最大の惨害をもたらした侵略戦争の産物として私たちが手にした日本国憲法の眼目ではなかったか。今こそ、世界に向けて理想論を唱えるときだ。戦禍に怯え、飢えに瀕している子どもたちに希望を語れるのは、世界中で私たち日本の民だけだ。甘いか? 枕はここまで。

 宣伝みたいに見えるかもしれないが、そうではなくて、心底、感動したのだ。小紙に、二〇二〇年九月から二〇二二年五月まで連載した「四国八十八ヶ所歩きお遍路一人旅」が本になった。著者の中村洋一さん(77)が、掲載された文章を修正・加筆し、新聞には載せられなかった写真や絵も収録している。奥付では、発行が弊社になっているが、中村さんが出版し、弊社のスタッフが編集を手伝ったというのが実態である。

 印刷・製本仕立てをいただいて、改めて一気に読了した。そして、新聞の連載では読み取れなかった、筆者の日ごとの汗や息遣いを感じ取った気分にさせられた。まるで一緒に四国を旅しているような感覚、と言ってもいいかもしれない。

 第一章の「阿波の国編」から、第二章「土佐の国編」へ。読み進めていくと、次第に中村さんの筆致に慣れる。そうすると一緒に歩いて、ローソンで買ったコーラを飲んだり、カロリーメイトを食べたりして小休止しているような気分に浸れるのだ。不思議な感覚だ。例えばこんな具合だ。