のっけから訂正です。前々号の本欄、「中原賞を運営する市の美術館に学芸員は1人――」の中で、道立旭川美術館のスタッフの人数に誤りがありました。「副館長一人、学芸員三人、総務の事務職員三人の合わせて七人。副館長も学芸員の資格を持つ。館長は非常勤」、ここまでは、その通り。以下「受付や監視業務、事務の補助などにあたる臨時職員が九人」と書きましたが、正しくは「受付や監視業務にあたる非常勤職員が六人、監視や事務の補助にあたる臨時職員が三人」の誤りでした。すみません。

 ところで、この記事について、美術に関わる仕事やその分野に関心を持つ数人の知人から反応があった。「もっと、ズバッと書いてもいいのに」と。「何だか、歯切れが悪かったよ」とも指摘された。彼らの言い分をまとめると――。

 「中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館などと大層な名前が付いているけれど、その実態は情けないものだ。あなたが書いた通り、学芸員の有資格者はたった一人。予算は、もともと少ないのに、このところの市の財政難を理由に、さらに削られる。パンフレットを見たかい? 職員がパソコンで手作りしたものだろうけど、A4判のカラーコピーだぜ。必要以上に仰々しいモノを作れとは言わない。だが、少なくても美術展なり、その関連イベントを広報する印刷物だ。手にして情けない気分にさせるようなシロモノじゃあねぇ。このまちの文化度が、あのパンフに如実に現れている、そんな気がする」

 「市の正職員七人のうち学芸員の資格を持っているのは一人。隣の井上靖記念館の事務を兼務していると言っても、二館合わせてせいぜい年間一万五千人の人館者ですよ。どれほどの事務処理が発生すると思いますか? 市の職員の平均年収六百三十万円。それが七人、臨時や嘱託の職員の人件費を含めると、軽く五千万円は超えるでしょう。つまり、この美術館には、それだけのお金が注ぎ込まれている。それが、市民に提供される作品展や美術分野のイベント、作品の収集や研究に投じられるのではなく、職員の給料に化けてしまっている、ということです」

 「美術館だけではなく、図書館、科学館、博物館などの教育分野の施設でも同じ。学芸員や司書として採用された職員はいない。資格を勘案する例もなくはないが、多くはたまたま資格を持っている職員が配属される、というのが実態。もともと総合職として採用しているから、資格を持っている職員が多くないという事情もある。その理由は、司書や学芸員などの専従として採用すると、配置転換が難しく、マンネリになるなんて説明されても、意味が分からないね」

 なぜ、旭川市はこれまで専門職の職員を採用してこなかったのか、長く市役所に勤務したOBいわく、「転勤もない組織の中で、専門職として長い期間同じ部署にいることで様々な弊害が発生する恐れがある、ということじゃなかったのかな」。

 ンー、分かるような、分からないような解説。百歩譲って、そうしたデメリットがあるとしてもだ、旭山動物園の例を見れば、その弊害をものともしないメリットがあるのが実証できるではないか。園長は獣医で、採用された時から、ずっと動物園勤務。副園長も、飼育員も同じ。その長い経験、研究の積み重ね、職場での議論があったからこそ、今がある、と言っていいだろう。美術に何の関心もない職員が、突然、美術館に配属されたって、良い仕事ができるはずがない。その職員本人にとっても不幸だし、税金を払っている私たち市民にとっては、理不尽でさえある。毎年毎年、彫刻美術館に投じられている巨費が、正しく市民に還元されることを望む。部や課をいじくり回すのではなく、市役所に必要な組織改革の核心は、そこにある――。

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