前週の本欄を読まれた方にお会いした折、やにわに「今週は、枕を二つ並べたような直言だったね。あれは次週分かい?」と笑い交じりに指摘を受けた。その自覚がなかったわけではないが、そうあからさまに言われると…。ということで、今号は即、本題に入る。

 天塩川の支流・サンル川に計画されているサンルダム建設を含む天塩川水系河川整備計画が、高橋はるみ知事の同意を受けて十月に策定されたことから、旭川と留萌の両開発建設部は、その環境保全について検討する専門家会議を設置、初会合が十四日、旭川市内のホテルで開かれた。

 正式名称は「天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議」。委員は八人。その構成について、整備計画が策定される前段階の天塩川流域委員会(〇三年五月~〇六年十二月)の元委員二人と、地元でダム反対を掲げる住民グループや道内の環境保護団体など十二グループ・団体から、それぞれ要望書が開発局に提出されていた。その主な内容は「専門家会議には、天塩川流域委員会の元メンバーが一人も入っていない。委員選考の基準を示してほしい」「それぞれの委員の専門性、経歴および選定した基準を公表してほしい」というもの。いずれも、開建側の立場に立つ専門家を選定しているのではないか、との疑念があることを暗に示している。

 流域委員会では、ダム建設を容認する委員と、ダムがサクラマスやカワシンジュガイなどの生息に重大な影響を与えるのではないかと強い懸念を示す委員との意見が平行線をたどり、開発局に提出した意見書は、ダムに対して賛否両論を併記する形になった。

 そうした経緯もあって設置された専門家会議では、委員の一人から「継続性を考えて、流域委員会での議論が分かるように、元委員が入った方が良いと考えるが」との意見が出された。少々あわてた格好の開建側は、「流域委員会では二十回の会議を通じて、整備計画を進めるにあたっての十分な意見をいただけた。元委員がいなくても十分な論議ができると考えている」と説明した。

 その委員は「専門家をむやみに増やすのは無理だとしても、流域委員会でどんな議論がなされたかを聞く機会があってもいい。また、魚類環境といっても様々で、ちょっと別の人に聞かなければ分からないじゃないか、という部分もある。元流域委以外にも、必要に応じて専門家を呼べるようなシステムを作っておいた方がいいのではないか。設置要領に『必要に応じて専門家を呼ぶことができる』という一項があっていい」と強く主張。開発側は、渋々「運営方針に一項を加えるよう検討したい」と答えざるを得なかった。

 会議終了後、記者会見の場が設定された。山本牧・北海道新聞記者は「八人の委員のうち四人は、開発局の仕事を受注している会社に所属している。そのうち少なくとも二人は、今日の会議に使われた資料を作った会社にいる。つまり、自分が作った資料について説明を受けて、それに対して意見を言うということになる。余人を持って替えがたいとしても、周囲から懸念や疑念を持たれるし、その委員に対しても失礼ではないか」と詰め寄った。

 開発側は「それぞれ専門分野の第一人者。勘ぐられるところはあるが、誤解されるのは心苦しい」などと、しどろもどろの説明をして「会議の議論を見てもらえば、そうした誤解も払拭されると思う」と弁解した。あぁあ、またかよ。懲りないと言うのか、恥知らずと言うのか、流域委員会の委員構成が「見え見えの御用学者をそろえるなど、あまりに恣意的」と批判されたことなど歯牙にもかけない、どんなに糾弾されても揺るがない、徹底した我田引水。

 開発局から仕事をもらっている法人に所属する委員が半数を占める状況にあっても、この会議が民主的に運営され、科学的な論拠に基づき、公正な論議が行われるよう祈るだけだ。決して開発局のための、役人による、組織維持を目的にしたダム建設ありきではなく、あくまでも、何のための河川整備なのかを大前提に据えた真摯な論議を望む――。

ご意見・ご感想お待ちしております。