あのぉ、のっけから言い訳のような話になるのですが…。前週、本欄で市の職員から届いた手紙を紹介しました。市の某副市長に関わる「焼鳥屋人事」に象徴される、もの言えば唇が寒くなる庁内の風潮を憂いながら、「厳しい財政状況だからこそ、知恵と汗を流し、新しいまちづくりの方向を見出そうとする動き」が、若手、中堅職員の間に芽生えているという報告でした。で、その「焼鳥屋人事」の記事のすぐ下に、焼鳥屋「ぎんねこ」さんの広告が載っていたのをお気づきでしたか?

 私の至らなさ、であります。元をただせば、ぎんねこを経営する久保厚子市議と私の間で、こんな話が交わされたのであります。

 「九月までは、これまで五年間、小路(ふらりーと)の皆さんと一緒になって取り組んで来た様々な活性化策もあって、観光客が『インターネットで見ました』とか言って来てくれたり、動物園のついでに寄ってくれたりして、まぁまぁの売上げだったの。ところが、その市外からのお客が来なくなった十月以降はパッタリ。十一月、十二月と、ひどい状況なのよ。だから、このクリスマス・お正月用の新子焼きで頑張るしかないの。助けて。目立つところに広告を載せていただけます?」(久保さん)

 「十月、十一月は、業種によらず、史上最低の売上げってところが多いからなぁ。ガソリンや灯油がこれだけ高騰したら、街には出なくなるし、財布の紐が堅くなる一方だ。わかりました。広告、目立つところに載せるようにしますから」(工藤)

 理解していただけますか? 決して、深い意味があるわけではなく、もちろん、記事中の「焼鳥屋人事」のお店と、「ぎんねこ」さんが符合しているわけでもありません。ただただ、非力な弊社ながら、頑張っている、小さなお店の力になって差し上げたい、という思いのなせるわざ、であります。

 偶然とは恐ろしいもので、たまたま現在開会中の市議会で、久保議員が庁内の人事についての質問を繰り広げたものですから、疑惑が疑惑を呼んだらしく、市の幹部に、うちの記者が「あれは久保議員のリークなんだろう?」なんて質される事態にも発展しまして。

 ところが、当の私は、その偶然の符号に気付かない。何人かの読者に「あれ、ぎんねこなのかい?」なんて指摘されて初めて、あららら、そう勘ぐられても仕方ない紙面の風景だわ、と我ながら吹き出してしまったりして。勘違い、深読み、ご迷惑をおかけした皆々様、申しわけありません。記事に嘘偽りはありませんし、「ぎんねこ」さんの新子焼きが旨いのも事実ですが、そこには全く因果関係はございません。そこのところを良くご理解のほどをお願いして、少々長い枕はここまで。

 本州に自作の米を売り込みに行っている友人の農家の話。「熊本の百貨店で一週間ほど米を売って気付いたんだが、街に活気があるんだ。五十万都市の熊本市の街中は、旭川の中心部に比べると、格段に人が出ている。周辺の人口を加えると、それほど違いはないのに、どうしてなのかと考えたら、モノを作って外に売っている大きな企業がある、ということじゃないかと思った。外貨を稼いで、地元で使う。だからお金が回るんじゃないかって」。

 ガソリン・灯油が高騰している影響が、積雪寒冷地の我が地域に顕著だ。その友人の話を思いながら、窓から雪景色を眺めていて考えた。「まち全体が冷蔵・冷凍庫状態」を活かす、シンプルな手立てはないものかと。

 子どもの頃、昭和三十年代から四十年代、冷蔵庫などなかった。加えて、窓にビニールを張って寒さを凌がなければならないほどの貧弱な住まいでは、醤油も凍るほどだった。晩秋、父と母は、自ら小さな菜園で収穫したり、農家から買い入れたキャベツやニンジン、ジャガイモなどの野菜を土に「いけた」。遥か遠い記憶をたどれば、畑に縦穴住居の要領で浅く穴を掘り、そこに貯蔵する野菜を入れて、かますや稲藁(わら)で囲って、その上に土をかける。言わば、大きな「お地蔵さんの傘」みたいな形にして雪を待つ。

 近郊の和寒町や剣淵町の「越冬キャベツ」が人気を呼んでいるという話を聞く。「雪中貯蔵熟成ジャガイモ」はどうだい、と思い浮かんだ。雪の中で一冬ねかせたイモを、長崎あたりの新ジャガが出回る前、二月か三月に掘り出して、本州に売り出す。種まきの段階からオーナーを募集し、生息状況や収穫の風景、土に「いける」様子をインターネットや手紙でお知らせする。あるいは、旭川に来てもらって収穫やいける作業を体験してもらってもいいだろう。私が雪が降らない大都会で暮らしていたら、十キロ一箱、二千八百円でも買いだな。キャベツが雪の下であんなに甘くなるんだ、ジャガイモがうまくならないはずがない、全く非科学的な論拠だけど、ハハハ。

 今度、農家の知人と会ったら、そんな話をしてみようと思っている。「何をバカなこと言ってるんだ」と一笑に付されそうではあるが、「まち全体が冷蔵庫」のキーワードから、何か生まれそうな気もする。

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