近ごろは正月気分でいられるのは七日まで、となっているようですが、元々は小正月の十五日までが「松の内」だったようですから、まずは、明けましておめでとうございます。どんな年末年始を過ごされたでしょうか。大晦日から元日にかけて降った雪で、腰を痛めたという方もおられるかもしれませんね。私はと言えば、いつもの通りの飲んで、食べて、ごろごろしての正月休みでありまして。例によって、自己嫌悪に陥りつつ年賀状も書かないままに…。

 ただ、恒例になっているおせち作りだけは、義務を果たしました。二十九日が仕事納め。三十日に買い出しに出かけ、鰹だしがたっぷり効いたうま煮を作りました。大晦日、お重に詰めます。このお重を手に入れたのは、三十三年前のこと。その前年、所帯を持って初めての正月に、クッキーの丸い缶を二つ重ねてお重の代わりにしました。大学をとんずらして就職したその年、初めていただいたボーナスの半分を投じて輪島塗の三段重を買ったのでした。今にして思えば、完全なる若気のいたり、重箱にきれいに詰められたおせちが、正しい家庭の正月の風景だと、なぜか思い込んでいたんです。どこから仕入れたイメージだったものやら。

 その、年に一度しか出番がないお重も、三十三年の歳月を経て、今回使い終えてぬるま湯で洗った折に、底の二本の“足”の塗が、少し剥落しかけていることに気づきました。漆塗りを手がけている知人に相談してみようか、と考えているところです。

 さて、おせちと酒と雑煮でうつらうつら状態の正月を過ごしながら、会社のこと、この地域のこと、大層ではありますが国のことなどを思った。

 年末、お会いした中小零細企業の経営者たちは、業種にかかわらず、ほとんど一様に会社の先行きを不安視していた。灯油・ガソリンの尋常でない暴騰を筆頭に、石油、鉄、鉛などの関連資材の価格が軒並上がり、食料品も値上げの嵐の様相だ。それらのコストの高騰を製品やサービスに転嫁できない状況の中で、「社員には申し訳ないが、今年はボーナスは出せなかった。出したら会社がなくなる」と肩を落とす社長や、「とても出せる状況ではないが、社員だって家族がある、住宅のローンを抱える社員もいる。無理無理、去年の半分だけ出した」と語る経営者もいた。

 地域間格差は広がる一方だ。そして、大企業と中小零細の企業間の格差もまた、果てしなく広がり続ける。元旦から店を開ける巨大資本の馬鹿げて巨大なショッピングセンターに、経済が沈下し続けるまちの、ボーナスも出せないほど業績が悪化した会社に勤める庶民らが、我も我もと列を作って押し寄せる。まるで、程度の低いコントを見ているような気になるではないか。

 泣き言や、恨みつらみを並べても、この地域の景気が好転するわけもない。まして、沈下を黙って見ているわけにはいかないのだ。方策はシンプルだ。この地で作って、道外に売る。その利益をこの地で使う。あるいは、この地でなければ出来ないサービスを創出して、または再発見して、道外から人を呼び込む。エネルギーは、個人、家庭、事業所、地域全体で浪費を慎むシステムを構築する。そのためには、子どもから高齢者までが興味を持って取り組める具体的な運動を提起して、行政も支援する。ンーそれから…、自然が豊かと見られている旭川地域が、本当に誇れる自然を有しているのか、もう一度見直してみるのも一つかな、そんなことを思いつつ過ごした正月でありました。今年も、本欄をご愛読のほど、よろしくお願いします。

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