十六日付の日本経済新聞に「動かぬ夏 こもるヒト」の見出しで、景気後退、物価高、米金融不安の広がりなどを理由に、お盆の帰省時に高速道路を使う人が減ったり、海外旅行者が前年を下回る現象が顕著になっている、という記事があった。逆に身近なレジャー施設が人気で、東京練馬の遊園地「としま園」の入園者は前年の二倍。電車での来場が増え、近所から自転車で来る人も多いという。

記事にいわく、「自宅でゆっくり過ごす人も多い。人気を集めるのが家庭でのホットケーキ作り。森永製菓のホットケーキ粉の月間売上高は前年比二ケタ増。少子化の影響で右肩下がりが続いてきたが、今年は一気に拡大。ケーキ粉も値上げが広がるが、それでも既製の菓子に比べ安い点が受けているようだ」。

「そうか、かあさんと、とうさんと、家でホットケーキを焼いて食べる時代が再びやって来るのかぁ」と、ある面でホッとするような気分を味わいつつ、そう言えば、ガソリンの値段が一リットル百五十円を超えたあたりから、街中を自転車で走る人の姿が目に見えて増えたよなぁ、と納得する。大きな車に乗っているのが恥ずかしくなるような情勢である。知人が言った。「でかい車に乗ってるのは、そこら中に百八十円づつバラまきながら走ってるのと同じだべ」…。

道北一と言われた北野組の自己破産、住宅の確認申請(床面積)は前年比四割の減、六月の百貨店やスーパーマーケットの売上高は前年同月比十五%も落ち込み、昨年三百万人を記録した旭山動物園の入園者数も下降に転じた。さらに、昨年来、市街地で始まっていたホテルの建設は親会社の倒産で工事ストップ、道外のデベロッパーによるホテル建設ラッシュにも黄色信号が灯る、言わずもがな公共工事は減少の一途。数字も目の前の現実も、お先真っ暗の状況だ。

灯油やガソリンだけ取っても、猛烈なコスト高が進行し、企業の業績は当然のこと落ち込む。私の周りにも「今夏のボーナスは勘弁してもらった」と漏らす中小零細企業の経営者は少なくない。そして「灯油の値段を考えたら、秋の暖房手当は出してやりたいけどさぁ…」と明るくない話は続く。八月、今はまだ暖かだからいいけれど、あと三カ月も待たないうちに白いモノがチラチラと落ちてくる。「今年の冬は凍死者が出るゾ」という、冗談話が現実にならなければいいけれど。

この負のスパイラル、国が悪い、政治のせいだと騒いだところでせんないことだ。高橋知事や福田総理に「対策」をお願いして、事態がコペルニクス的に好転するとは到底思えない。「油が高くて船が出せない」とストライキを敢行した漁業者ばかりが「どうにもならない」のではなく、あらゆる業界、業種、職に就いていない人も、年金暮らしの高齢者も、みーんな困っている、これからもっと困るだろう状況にあるのだから。

間違いなく寒い冬が来る。市庁舎をはじめとする公共施設、文化会館や公民館、地区センター、体育館、図書館、そして学校の暖房費は前年の二倍近くになるだろう。まさか子どもたちに「金がないから寒くても我慢しろ」とは言えない。さらに、大型車両を動かして除雪に当たる企業は例年の請負金額では大赤字になるだろうから、当然のこと燃料費高騰分の値上げを求めるに違いない。財政が極めて逼迫している折から、こうした億単位の出費増をどんな方策で穴埋めするのだろう。

国の、道の、政治に頼れない。こんな時こそ、地方の自治体の首長がどう動くか、市民にどんなメッセージを送れるか、だと思う。まちの為政者と市民が一体感を持って、この経験したことのない「誰も、全く、先を見通せない状況」をどのように乗り切るのか。それは、ある意味で、西川市長が抱くまちづくりの核心部分にもなろう。一刻も早く、臨時市議会を招集し、市長の決意を表明すべきだと考える。

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