旭川には珍しい強風と湿った雪の嵐が去った。空が春の色に変わった。あと一カ月もすれば、土が顔を出し始めることだろう。いつもの年に比べれば少ないとはいえ、自宅の周りの畑は雪で覆われている。その雪面を目でなぞりながら、今年は、あそこにトマトとキュウリを植えて、裏の畑には連作障害が少し心配だが、長ネギを二畝つくって、防虫に効果があるというからマリーゴールドを咲かせてみようか…、などとささやかな営農計画を立てて楽しんでいる今日この頃。柄にもなくおくゆかしい、短めの枕は、ここまで。

前号の本紙が伝えたが、北海道運輸局に値上げを申請していた旭川のタクシー会社十社が、値上げを認可されながら、自ら申請を取り下げた。厳しい経営、過酷な労働条件がさらに悪化する可能性がある、という判断だという。いつ収まるか知れない不況風が吹き荒れる中で、客のタクシー離れが進むのはやむを得ないとしても、どうも自助努力が足りないと感じるのは私だけか。

そのほんの一例。会合があって二次会に流れ、その後、一人で軽く飲み直し、いささか酩酊状態でタクシーを拾った。まっ、そう珍しくない、いつものパターン。たいていの運転手は、「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。が、この方は無言。乗り込む時、足元が滑って、オットットとよろけた。車の屋根にすがって、どうにか無事にシートに座った。「いゃあ、ツルツルだねぇ」とほろ酔い、いい気分の私。彼、無言。まっ、酔っ払いのオヤジだし、別に気遣っていただかなくても構わないのだけれど、「大丈夫ですか?」とか、「滑りますねぇ」とかさぁ、何か一言あっていいんじゃないの? で、「○条西○丁目」と行き先を告げると、「なに? ○条○丁目?」って、つっけんどんに聞き返す。温厚な私もさすがに「西○丁目って言ってるだろうが」なんて、けんか腰の言い方になっちゃうじゃないか。

こちらが疲れている時に、ペラペラしゃべりまくる運転手もちょっと勘弁ではあるが、料金を払って車を降りるときくらい「ありがとうございました」でも、「お気をつけて」でも、「まいどありー」でもいいからさぁ、一声かけて損はないと思うわけよ。翌朝まで良くない気分が残るような、こんな応対をされるくらいなら、後からどんな文句を言われようが、冷たい仕打ちをうけようが、家に電話をかけて、寝ている家人に平身低頭でお願いして迎えに来させる方が、よほどマシ、となる。

函館に行った折、乗ったタクシーの運転手は、地元に対する愛着心も、観光面の豊富な知識も、さすが歴史ある観光地を感じさせたが、何より適度な気遣いに感心させられた。「時間があったら、コーヒーでも飲みません?」って誘いたくなるほどだったぜ、その人は女性ドライバーだったけどさ、ハハハ。冗談は別にして、料金の高い安いももちろん大切な要素ではあるが、タクシーにはサービス業としての一面もあるということを業界の方たちに、もう少し認識していただかなければ、旭川にMKタクシーが参入して来ればいいのに、なんて思われてしまうのですぞ。

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