一カ月余り前、友人の農家にお願いして米づくりを体験させてもらう、という話を書いた。四月二十二日の播種から、育苗、田起し、代かきと、ポイントになる時期に作業の真似事のようなことをしつつ、今月二十二日、いよいよ田植えを迎えた。お借りした一反四畝の田んぼに、「ほしのゆめ」の苗を手で植える。その数、およそ三万四千株。当日集まったのは、友人知人合わせて七人、縁あって女子大生六人が助っ人として加わった。

裸足で田んぼに入ったのは、四十年以上も昔、通っていた中学校の農繁期休暇の折、農家の友達のところに手伝いに行って以来のこと。感想はと問われれば、女子大生の叫び声ではないけれど、「なにーこれー、チョー気持ちいいー」という心境でありました、ハイ。

オーナーが昔を思い出しながら再現してくれた道具を使い、水が引いた田んぼに苗を植えるポイントの目印をつけた。その網目状の線を頼りに遥か遠い対岸の畦に向かって苗を植えて行く。ゆっくりではあるが、労働の結果は明確に現れる。自分にも、周りの者の目にも、はっきりと。「アイツ、意外に手早いし、持久力があるんだ…」という具合に。

石狩川から取水し、突哨山の麓を縫って走る用水路の清涼な水で足の泥を洗い、田んぼの畦で食べる昼食のおにぎりの味は格別だった。

翌日、予想通り階段を昇るのにも「アイテテ…」と悲鳴をあげる状態となった。そして漠然とではあるが、強く思うことがあった。「人の能力の高い低いは、予知とか感知、つまり想像力の量の多寡と同一ではあるまいか」ということである。雲の動きを見て、明日の空模様を予知したり、霜が降りるとか、気温が下がるとか、経験とカンを働かせるために、目や耳や鼻や手触りや、ヒトという動物が持つ全身の器官を総動員できる力の強弱、それが生きるための能力ではないのか。それは対人関係においても言えるだろう。相手が何を考え、何を求めているかを察知し、瞬時に対処する力。それを養うためにはどんな訓練が、教育が必要か…。痛い腰をさすりつつ、農業は哲学に通じるなぁ、そんな気持ちをさらに強くした田植え体験だった。米作りのリポートを兼ねた枕はここまで。

市職員の夏季期末・勤勉手当(ボーナス)を減額する条例改正案が現在開会中の臨時市議会に提案される。経済情勢の急激な悪化で民間企業の夏のボーナスが大幅に落ち込むことから、国家公務員に対する人事院の減額勧告にならった措置だ。今季の支給額は、全役職平均で約七万五千円減り、七十二万八千円になる。ンー、零細弱小企業の経営を預かる身としては、〇・二カ月分減額し、平均でこの額ですかぁ、とため息が出そうになるが、自助努力の結果とあきらめ、ここでは何も言うまい。

そして市議会も、市職員に横並びで自らのボーナスを報酬月額の〇・二カ月分減額する条例改正を提案する方向だという。市議の報酬は月額五十一万五千円。期末手当は、これまで四・四カ月分だったから夏・冬合わせて二百二十六万六千円。減額する条例改正案が可決されれば、今季は十二万三千六百円減って百十七万四千二百円となる。

ところで、市議が手にするボーナスには、市職員と同じように「役職加算」が適用されている。この「加算」は国にならい、一九九〇年(平成二年)、民間企業の賞与が役職の上位ほど手厚くなっているのに対し、公務員のボーナスは役職を問わず一律に支給月数が決められているとして導入された。不思議なことに、「役職」ではないはずの議員も、ちゃっかり便乗して「二〇%加算」する条例をつくり、以来、役職加算を受け取り続けている。その額は、年間四十五万三千円。

本紙四月七日号で報じたように、この役職加算については、無所属議員の一人が受け取りを拒否し、加算分を法務局に供託している。また、九〇年十二月、市議の役職加算について論議された市議会で、共産党は「(役職加算を)職員給料と異なる議員報酬の期末手当に対しても連動させることは筋違いであり、今後改めるべきである」として反対の立場を鮮明にしている。記事の中で、今臨時議会で副議長に就任し、議会改革を掲げる共産党の佐々木卓也氏は「議員への役職加算を止める方向で協力できる会派・議員を結集し、これが可決される力関係となるよう努力を重ねていきたい」とも語っている。

三千もの有権者に自分の名前を書かせ、選挙に落ちればタダの人、しかも何年務めようとも退職金はナシ。そんな市議会議員の報酬が市の課長職と同程度、これも私としてはいかがなものか、と感じている。「市民のため、まちのため」というプライドがあってこそ務まる職、本来の意味で「名誉の職」だろう。その方たちが、部課長や係長、主査のおこぼれを頂戴するように「役職加算」を手にし続けるなんて…。

経済の落ち込みは明らかだ。市の歳入は間違いなく減る。市議会は、ボーナスの減額と同時に、筋の通らない市議の役職加算をやめる決断を自らすべき時だ――。

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