二十日付朝日「民主、300議席うかがう勢い 自民苦戦、半減か」。二十一日付読売「民主300議席超す勢い 自民激減 公明は苦戦」。同じく二十一日付日経「民主圧勝の勢い 300人超が当選圏 自民、半減以下も」。そして、二十三日付道新「民主300議席超す勢い 自民100台前半か 公明不振 共社苦戦 」。

三十日投開票の総選挙を前に、各紙とも民主党の圧勝を予測し、「政権交代が現実になる」としている。さて、前回〇五年(平成十七年)の「郵政選挙」は、自民党が三百を超す議席を獲得し、「歴史的な大勝」とも称されたが、その選挙一週間前の報道は、各紙とも「自民党 単独過半数の勢い」程度だった。それが今回は、「三百議席以上」、さらに「参院で否決された法案を再可決できる衆院三分の二(三百二十議席)以上の議席獲得も視野に入る」(日経)との報道さえある。

小選挙区のなせるわざである。言うまでもないが、衆院は小選挙区(三百議席)と比例代表区(百八十議席)の並立制。小選挙区は、一つの選挙区で当選するのは一人だ。〇五年の選挙で自民党が獲得した小選挙区の議席は二百十九。対する民主党は五十二、自民の四分の一以下だった。では、そのときの得票率はどうだったか。自民党五三・九%。民主党四一・八%。一二・一ポイントの差でしかない。事前の予測が「三百超確実」とされる今回、自民は半減どころか、百議席以下に埋没する可能性もあるということだろう。

その民主党。官僚主導の政治から、政治家による政治に大転換する、とマニフェストに掲げている。「税金の無駄遣いを徹底的に排除」し、それを財源に「子ども手当て」や「高速道路の無料化」「農家への直接補償」を実現できるのだと。次男坊に議席を禅譲せんとして政界を去る小泉元首相ではないが、霞ヶ関を「ぶっ壊す」ほどの気概と根性がなければなし得ない、夢物語にも聞こえるが、親交がある農業者が言う「これまで自民党の農政にさんざん右往左往させられて来たから、まぁ、それほど言うなら、一度やらせてみるべや、という感じかな」が、今回民主党に一票を投じる多くの有権者の声を代弁している。

あんたたち、本当に税金の無駄遣いを洗い直し、役人天国に楔を打ち込む覚悟はあるのかい? と疑わせる例がある。道内の十五団体でつくる北海道脱ダムをめざす会が、選挙を前に自民・公明・民主・共産・社民・新党大地・国民新党・新党日本の各政党に対して行ったアンケートの結果である。

本紙で度々取り上げているサンルダムについて、少々おさらいする。天塩川水系のサンル川にダムをつくる計画は、地元下川町の住民グループや道内外の自然保護団体の反対をよそに、今年度本体工事の予算がついた。建設予定費五百三十億円のうち、ダム建設の是非を含む天塩川整備計画の論議がされている最中から、周辺では道路や橋の建設が進み、すでに建設費の半額が注ぎ込まれている。

つまり、流域委員会だの、住民に対する説明会だの、生息する魚類の専門家会議だのといった手続きは、規定のアリバイをつくるためのもので、事業主体の国土交通省北海道開発局というお役人の組織は、「住民の声を反映する」というポーズをとりながら、実は、最初から「ダムはつくる」と決めていたということ。その手続き上必要な流域委員会や専門家会議のメンバーを選ぶのも開発局。流域委員会の委員長は、北大教授の肩書きだったが、元開発局の職員。副委員長と治水の専門家として名を連ねた委員も開発局と資金面で繋がっている人物。魚類専門家会議のメンバー八人のうち、座長を含む七人は開発から仕事を受注している企業・団体の関係者だったことが判っている。

開発局自身が実施したアンケート(九八年)で、「洪水や土砂災害に対する安全性」を問われた流域住民の八九%が、「安全だと思う」「ある程度安全だと思う」と回答し、「洪水対策として具体的に勧めてほしいこと」に対して、「ダムの整備」と答えたのは、わずか七%。それら住民の声は、開発局という役人組織を維持し、彼らの仕事を確保する目的のために「地域住民がダム建設を望んでいる」と正反対の結論に摩り替えられる。

民主党は、今回の選挙のマニフェストに「現在計画中または建設中のダムについては、いったんすべて凍結し、その必要性を再検討する」と謳っている。アンケートに対して、民主党の北海道の責任者は、サンルダムの建設について「住民意見等の反映を条件に」と但し書きがあるものの、「推進」と回答している。さらに、「流域委員会などの住民等の意見を反映する委員の選出」についても「河川管理者が行う」という答えだ。

道内の民主党の国会議員たちは、労組の支援を受けている。開発局にも労組はあろう。彼らに対する配慮、彼らからの要請、その票ほしさに、こうした回答になったと見るのは穿ち過ぎか。政権を獲った後、脱官僚政治、本当の意味の地方分権、税金の無駄遣いの排除…、民主党がマニフェストに掲げる「革命」は、少々眉に唾をつけて聞いたほうがいいかな、とサンルダムについての立場を見る限り、そんな気持ちで期日前投票に行こうと思っている。

ご意見・ご感想お待ちしております。