恥ずかしながら、小紙の記事で読むまで知らなかった。「旭川リンクリンクミュージアム」という割引制度のこと。地元の文化施設をもっと気軽に、ちょっとお安く利用してもらおうと、市内の公・民の施設が、それぞれ他の館の観覧チケットの半券を示すと、割引が受けられるのだそうだ。参加しているのは、中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館、井上靖記念館、川村カ子トアイヌ記念館、道立旭川美術館、北海道伝統美術工芸村(優佳良織工芸館・国際染織美術館・雪の美術館)旭川兵村記念館、旭川市科学館「サイパル」、旭川市博物館、三浦綾子記念文学館、西川徹郎文學館の十施設。

 館によって割引率は違うし、展覧会ごとに異なることもあるが、例えば、道立旭川美術館で現在行なわれている「アロイーズ」展の観覧料は大人千円。その以前、科学館に行ったときの入館料四百円の半券を入口で出せば、二割引き、つまり八百円で観ることができる。二人で行けば、四百円もお得。帰りにコーヒー一杯、ただで飲める計算になるじゃないか。

 思わず、「エライ」と叫んでしまった。その柔らかな発想と互助の精神、そしてお金をかけずに互いに広報し合う優しい気持ちが伝わる。旭山動物園の旭川市民限定の優待割引を受けるときの、遠くからわざわざ旭川まで来てくれた市民以外の方たちに対して何となく後ろめたい、まけてもらってゴメンネ感もない。来週は、この半券を持って、どこに行こうか、なんて相談したくなるような。景気が低迷し、人もお金も動きを鈍くしているご時世、なんて賢いシステムなんだ。さぁ、みんなー、半券持って出かけようぜ。枕はここまで。

 前週の本紙一面で、釧路に本社を置くリラィアブル社が、旭川駅南で整備が進んでいる「北彩都」地区に、書籍や文具、雑貨、CDやDVDなどの音楽ソフト、さらに飲食店などが入る複合大型店「コーチャンフォー」を開店する可能性が高いと報じた。丸井今井が撤退し、買物公園を含む中心市街地の衰退が懸念される現状が、さらに悪い方向へ向かう事態を招くのではないか、という記事である。

 少しおさらい。建設予定地とみられるのは、北彩都計画では「テーマゾーン」と呼ばれる地区の一画で、JR北海道が約四万平方メートルを所有。コーチャンフォーは、駐車場を含め一万平方メートル以上の敷地になるとみられる。リラィアブルは、コーチャンフォーを釧路に一店舗、札幌に三店舗、書籍を中心とする店舗を釧路、北見、根室に持ち、計八店舗を展開している。同社は、北見市に土地を取得していて、コーチャンフォーの進出を計画していた。しかし、同市は郊外型大型店の出店を抑制する目的で、都市計画関連の条例を改正し、床面積が一万平方メートルを超える店舗の新たな出店が困難になった。そのため、計画を変更し、旭川市に狙いを定めたという。

 まちづくりの市民運動に長く関わっている方から、前週の記事を読んで電話をいただいた。「本や文具、雑貨に限っても、コーチャンフォーが、あの場所に開店すれば、買物公園にある書店、冨貴堂メガと西武の中にある三省堂やロフトは、間違いなく大きな影響を受けるだろう。その影響は、本や文具、雑貨にとどまらないのは明白だ。道路や橋の新設で、車の流れ、つまり人の流れが大きく変わる。これまででさえ、丸井今井が閉店し、地元資本の店舗が年々減って、衰退のスピードが目に見えて早くなっている。そもそも、北彩都には買物公園や銀座商店街と競合するような商業施設はつくらないという約束ではなかったのか。旭川市は、買物公園を含む中心市街地の活性化のために、これまで巨額の税金を投入して来たではないか。市が、黙ってコーチャンフォーの進出を許すというのは、どう考えても納得がいかない。土地がJRのものだとしても、まちづくりの観点から、せめて掛け合うくらいの意地はないのだろうか。市民の一人として情けない気持ちだ」

 現在開かれている市議会でも、コーチャンフォー進出の問題が取り上げられた。安住太伸議員の「市が巨額の投資を行い、人手もかけてきた中心市街地の衰退に拍車をかけるのではないか」という主旨の質問に対し、西川市長は、「既存の商店街に影響はあるだろう。その一方で、人が北彩都に集まることで、相乗効果も期待できる」などと答えた。つまり、コーチャンフォーの進出には、反対ではないという意味だ。さて、車で北彩都の大型複合店に乗り付け、本や雑貨を買った客が、買物公園や銀座商店街に戻って、再び買い物をしたり食事をしたりするだろうか。

 書店関係者の一人は憤る。「買物公園から、本屋が消えることになるかもしれない。まちを代表する商店街に本屋がないなんて、どこが『北の文化の香るまち』だ。地元の本屋は、例えアルバイトやパートであっても、書籍に対する知識を持った人材を採用し、育て、待遇面でも大事にしている。そうした人たちの雇用の場を奪うことの損失の大きさもイメージできないほど想像力の欠如した市長なんですかね…」――。

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