師走の半ば過ぎ、以下のようなメールが届いた。あらかじめ断っておくが、市職員の斬新な発想と取り組みを批判するのが目的ではない。

 ――市役所のホームページを見ていたら、健康推進課でこんな催し(添付参照)があります。健康ソングやらのボーカルをオーディションで決めて、CD化するそうです。「ボーカルオーディション」…チラシのタイトルを見ればインパクトありますが、楽曲だとかは、音楽経験のない、市役所職員の素人さんが作ったようです…

 確かに「健康推進」のPRは必要だとは思いますが、こんなCD製作して、頒布して喫煙人口は減るんでしょうか? メタボ人口は減りますか?? 滑稽でなりません。

 歳入が厳しいさなかにお祭りみたいなイベント…こんな事業にお金を掛ける必要があるんでしょうかね?? 

 副賞総額十万円… ゲストに芸能人?を呼んでますが、東京などから芸能人らしき人やマネージャーなど、スタッフを招聘したら総額は一体いくらになるんでしょうか??

 そんなお金があったら、失業等で生活が困窮し、年越しができない人に無利息で融資するなどの財源に充ててみてはどうかと思いますね。

国の事業仕分けでは、真っ先に廃止になるような内容ですよ。市役所の事業も「事業仕分け」が必要ではないのでしょうか???

こんなこと市役所に言っても「開催が決まっているから中止できない。」とか言われるだけでしょうから、マスコミさんにちょっと言わせていただきました。 旭川市 匿名希望

 本紙は、このイベントのお知らせを十二月二十二日号で、「旭川けんこう応援プラザ大募集!! ボーカルオーデション参加者」の見出しを付けて掲載している。そのサワリを。

 ――旭川けんこう応援プラザ(宮下通七、旭川エスタ四階)が、市民の健康をテーマにした歌の公開オーデションを一月二十四日午後二時から、旭川エスタ四階イベントステージでおこなうのに合わせ、参加者を募集している。

 参加者が歌う曲目は市保健所健康推進課の伊藤純子さん(29)と逸見昌子さん(27)が職場の同僚たちの助言を受けながら作詞作曲をした「GOGO HAPPY(けんこう応援プラザCMソング)」「禁煙ブルース」「笑顔まんまる」「メタボ男のラブソング」「女性の健康応援ソング」の五曲。一人(グループ)何曲でも応募できる。「軽いノリの曲が多いので、誰でも簡単に歌うことができます」と二人(略)

 それぞれの曲で最優秀賞を選び(複数受賞もある)、レコーディングとCDを制作する。CDはけんこう応援プラザや各種イベントで使用されることになる。また、各曲の最優秀賞には副賞として二万円が贈呈される。オーデション当日には、宇多田ひかるの物まねで人気のミラクルひかるのスペシャルライブがある。

 応募資格は旭川市在住・出身の人や縁のある人などで、アマ・プロを問わない。年齢制限はない(略)という記事。

 私なりに好意的に想像してみる。国から健康推進を目的にお金がついた。何か事業をしなければならない。で、若い職員が、「若い市民にも関心を持ってもらうためには」と知恵を絞って企画した。だめもとで上司に御伺いを立ててみたら、意外にも「面白いじゃないか、やってみろ」となった。「責任はオレがとる」と言ったかどうかは分からない。で、自分達も作詞作曲で四苦八苦しながら、予算総額百四十万円の事業を立ち上げた。

 匿名のメールの主が言うように、こんなCD製作して、頒布して、喫煙人口がどれくらい減るか、メタボ人口の減少に効果はあるか、と言えば、「さあ、どうでしょう」だろう。が、企画した彼ら若い職員の心意気が、もしかすると若い人たちが喫煙の害やメタボに関心を持つきっかけになるかも知れない、とも思う。「ミラクルひかる」なんて聞いたこともない、「今の若い者は…」という言葉が、時折口をついて出てしまいそうになるオジサンには少々頭を傾げたくなる部分もあるけれど、お堅い市が主催するイベントとしては、冒険的で、遊び心もあって、なかなかじゃないの。

 ただ、ただね、記者が書き上げた原稿を読んだ瞬間、オジサンは見抜いてしまった。「これ、もしかして、市の独自の予算で企画したんじゃないな」って。匂いがした。「予算が、これくらい付いたから、何か事業を考えなくっちゃ」という、いわば義務的企画の気配がしたのだ。「市民に健康になってもらうために、少ない予算で、どんなことが出来るだろう」と呻吟した気配が、このイベントから滲み出てはいないから。

 多少経験豊富なオジサンとしてアドバイスさせていただくと、もっともっと、街に出て、いろんな人に会うべきだ。この街には、面白い人がたくさんいる。こうしたイベントにしても、それほどお金をかけずに、企画の準備段階を楽しんだりしながら、派手ではなくても、時間をかけてジワジワと効果が浸透していくような、そんなアイデアを出してくれる人と出会うために、市の職員は積極的に外に、街に出るべきだ。あなたたちの社長の西川さんが掲げる「市民との共働」の意味は、実は、そのことだと確信する。

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