「いまここにいる三十代、四十代、五十代のなかで、我々ほどこの国を憂えている人間がいるのか」――会見会場の記者たちを指差して、石原慎太郎・東京都知事が吠える。新党・たちあがれ日本の命名者だとか。あなたが言う「国を憂う」という精神的行為が、具体的にどのようなものを指すのか知りたくもないけれど、あなたにだけは言われたくないんですけど。

 実現の可能性が極めて低いオリンピック招致に莫大な金を注ぎ込んだり、海外出張で一本ン万円のワイン飲んだり、画家の息子に都の仕事を発注したり、都庁に出勤するのは月に何日だ? みたいな、そんなお方に、指差されて、頭ごなしに説教されたくありませんけど。

 そもそも、何十年も政治家やってて、息子も政治家で、自らの責任は頬かぶりしちゃって、三十代、四十代、五十代の年下世代に対して、そんなに威張っていいわけ?「たちあがれ」じゃなくて「たちがれ」だ、なんて、人生の先輩に、そんな無礼なことは言わないが、「おれたちだけが国を憂えている」なんて吠えられると、「爺(じい)が自賛」はやめてくれ、くらいの悪態はつきたくなりますけど。枕は、ここまで。

 弊社の女性記者が「こんな観光パンフ、あるんですね」と、冊子を持って来た。B6判サイズ、四十三ページ。表紙に「旭川まちなか たのしみMAP」、裏表紙「旭川まちなか べんりMAP」とある。中を開けば、買物公園を中心とした地図のほかに、銀座商店街、東高周辺、常磐公園周辺の、公共・文化施設や飲食店などの場所が記され、「旭川市民がよく行く」とのタイトルで、ラーメン屋さんや居酒屋なども写真付きで紹介している。

 で、弊社がある「常磐公園周辺」のマップを見ると、ロータリーの近くに「みづの」の表記。「しょうがラーメンのみづの」さんのことだろう。が、そこから百メートルほどの距離、弊社の隣にある「みそラーメン一味軒」さんの名前は見当たらない。さらに、二店とも「旭川市民がよく行く麺屋」のページには、紹介なし。フランチャイズのラーメン屋さんや全国チェーンのファストフード店まで写真付きで載せてさぁ、地元で何十年ものれんを出し続け、店構えはいささか古風ではあるが、地域の味として親しまれているラーメン屋を無視するとは、何事ぞ。こんなマップ、誰が作ったんだー。ということで、制作・発行元の市経済観光部経済総務課に取材してみると――。

 平成二十一年度の緊急雇用創出推進事業として、国のお金が道を通じて交付され、市の各部署で「雇用創出」を目的に様々な事業を行なった、その一つだそうな。プロポーザル(複数の受託希望者からその目的に合った企画を提案してもらい、その中から企画・提案能力のある者を選ぶ方式)で、札幌に本社があり、旭川に営業所を置くコンサルタント会社が受託し、昨年十二月から今年三月までの期間、新規に十一人を雇用して制作したという。人件費や事務所の諸経費、編集・印刷費など、千三百七十七万円をかけて制作したとのこと。「十万部つくり、地図に掲載した店舗やホテル、商店街の組合などに配付し、今後は公民館や支所などの公共施設にも置いていく予定」と担当者。

 観光マップといえば、同じ市経済観光部だが観光課が、旭川観光協会に委託して制作している「旭川ガイドマップ」がある。観光協会に行ってみた。スタッフの一人は、「へぇー、こんなマップ作ったんだー」と手に取って、「まち中の、こんな地図、うちのパンフにも載せたいんだけど、予算がぎりぎりでねぇー」とおっしゃる。課が違うといっても同じ経済観光部がつくる観光マップ、事前に相談やら、連絡やらがなかったのかと質問すると、「お恥かしい話ですが、今の今まで知りませんでした」。三十万部印刷している、こちらのパンフは、もう何年も継続して作り続けている。当然、情報やノウハウの蓄積もあるだろう。雇用対策が主目的であろうがなかろうが、良いモノを作るために、連携・協力して悪いはずがないではないか。

 ちなみに、地図には昨年一月に倒産した建築会社の名もあった。経済総務課は「訪れた人がどこにいるか分かるような、ランドマーク、目印のような建物を載せた」と説明するが、さて。

 肝心の緊急雇用だが、受託した会社は昨年十二月に雇用した社員を仕事が終わった四月以降、継続して雇用することはなかったという。つまり、国のお金で雇われた十一人は、四カ月で全員解雇。市の担当者は「継続雇用というしばりはないですから」と言う。仕事がなくなれば、不要な人は切る、企業としては当たり前のことだろう。だが、それを仕掛けた当事者の一角である行政は、雇用が継続される手立てを講じる施策を考えられないものか、と強く思う。

 国から道を通じて降って来た金を「処理」することだけに注力し、それで終わりでいいのか。その先に知恵を絞るのが、地方の自治体の本来の仕事ではないのか。民間企業の二倍以上の給料を取っている市職員は、もっと、正しく仕事をしなければダメだ。それを主導するのが市長の仕事ではありませんか、西川さん――。

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