神居に住んでいるYさんから、「今日と明日、オープンガーデンしているから、時間があればどうぞ」と電話をいただいた。以前から、ガーデニングの専門誌にも紹介されたり、NHKの番組に取り上げられたりして、その世界の方たちには全国レベルの、かなり有名な庭だとの話は聞いていたのだが、見せていただくのは初めてだった。

 自宅横の百三十坪ほどの庭は、以前、ご主人の両親の家があったのだそうだ。十一年ほどかけて、奥さんが自ら設計し、石を入れたり、レンガを敷いたり、パーゴラを建てたりしながら、コツコツと庭造りを続けてきた。バラのアーチが迎えてくれるその庭の、なんて素敵なこと。花や木がつくる秘密の小道に踏み込むような、ちょっとワクワクする不思議な感覚にしてくれる。木陰のチェアで、紅茶でもいれて、本を広げたら、どんな気分かな…。

 この日は、岡山からの団体三十数人がバスで乗り付けたとのこと。オープンガーデンの情報誌を頼りに、道内はもちろん、道外からもやって来るガーデニングファンでお昼ご飯をとる余裕もないほどだという。私が訪ねた午後は、雨が落ちて来る空模様だったのだが、それでも引っ切り無しに「見せてくださーい」とお客がやって来ていた。

 ご主人は「これ、まち興しに使えると思うんだよね」と言う。食い意地が張った私には、どちらかといえば菜園の方に魅力を感じるが、団子より花、という高尚な精神をお持ちの方も少なくない。丹精込めて造り、日々手入れを欠かさない個人の庭を巡るツアーというのも、新しい旅の形として悪くないなぁ、そう感じた。

 そうそう、Yさんの庭の一角には、ちゃんとキュウリやトマトの畑もあった。ご夫婦の暮らしが垣間見える気がして、なんとなくホッとしたのだった。枕はここまで。

 旭川商工会議所の簿外資金、いわゆる裏金の問題で、専務理事と事務局長が懲戒免職、経理事務の女性職員が諭旨免職の処分を受けた。議員総会で執行部からの報告があり、幾人かの議員から質問や意見が出された後、三人の処分案を含む提案の議決は、「拍手をもって了承を」だったという。

 出席した議員の一人は、「シャンシャン総会じゃあるまいし、四千三百社の会員企業を抱える、半ば公的な機関が裏金を作って運用していたという何とも恥かしい事件の結末を拍手で議決なんて、何を考えているんだと感じた。専務理事ら三人に全ての責任を押し付けて、つまりトカゲの尻尾を切って、あとは知らんぷりということだろう」と憤りながら、「この裏金は、もともとは選挙資金にも流用されていた金だ。会議所と関係が深かった政治団体が、表と裏の金を調整するのに利用していたのだろう。当然、歴代の会頭も、歴代の専務理事や事務局長をはじめとする幹部職員も、その存在を知っていたし、実際に関わっていたんだ。何十年もの間、その使途は選挙関連や職員の福利厚生費のような限られたものだったが、前会頭になってから飲み食いなど無分別に使われるようになった。現会頭は、長く筆頭副会頭を務めていた。私は知らなかったで済む話なのか。常議員会では、非常勤だといっても正副会頭をはじめ、常議員にも一定の責任があるのではないかという発言もあったと聞く。企業経営者として、あるいは経済団体の幹部を務める者として、至極真っ当な感覚だと思う。三人を懲戒免職など厳しく処分しながら、一方では、私的流用はなかったとの理由から刑事告発はしない、正副会頭はじめ議員の責任は一切問わないというのは、整合性が取れない、矛盾しているのではないか」と指摘する。

 懲戒解雇された事務局長の後任には、プロパーの職員が就いたが、専務理事の人事は未定だという。しばらくは空席にするという話も伝わる。この不祥事を機に、旭川市役所との人事交流を始めたらいかがか。会議所の事務局は、正職員二十五人という狭い世界だ。想像するに、“出世競争”も窮屈でいびつなものになりがちだろう。今回の裏金にまつわる事件の根っこにも、職員間の鬱屈した人間関係があるのではないか。片や三千人の旭川市役所も外の世界、企業や民間人と接する機会が極めて限られている職場だ。市役所という閉じられた特異な職場から、普通の社会に出して普通の仕事を経験させる。互いに出向させることで、双方の職員の意識が変わり、モチベーションが上がる効果が期待できよう。いずれにしろ、「シャンシャン」で終わらせるレベルの不祥事ではない。

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