“中国通”の友人の“中国観”と、道議の駆け込み海外視察について――
三十年来、中国に通い、現地に多くの親しい友人を持つ男の話である。
――女房と二人で上海の街を歩いて、疲れたのでベンチに並んで座って休んでいた。そこに若い中国人女性の二人連れがやって来て、私たちの横に座っておしゃべりを始めた。小さなベンチだったから、私たちは少し横にずれて、二人が座れるように気をつかったんだ。暑い日だった。中国人女性の汗で濡れたシャツが腕に密着するのがいやで、女房が僕に目配せして、もう少しずれろと促す。腰を浮かせて、少しずれる。空いた空間に、彼女たち二人が腰を進める。そんなことを二度、三度繰り返していたら、一番端に座っていた僕は、ベンチから転げ落ちてしまった。女房は、あわてて立ち上がる。彼女たちは、何事もなかったかのようにベンチの中央に座っておしゃべりを続けている。
――中国人の代表的な気質というか、国民性というか。もちろん、十三億だか、十四億だかの全ての中国人がそうだ、というのではない。でも、日本人が総体として美徳と考える謙譲とか、遠慮とか、惻隠とか、そんな日本人的常識や感覚は持ち合わせていないと考えていい。それが悪いとか、良いとかではない。それが彼ら、彼の国の属性だ、と捉えなければならないんだ。その上で、そういう人たち、国民、社会、国と、どのように付き合えばいいのか、それを知り、学ぶべきなんだ。個人、民間、商売、外交、文化、国、あらゆるレベルの交流は、それが一つの大きな目的だということさ。
――共産党の一党独裁の下で、超急激な経済発展を遂げ、百倍とも、二百倍とも言われる貧富の格差が歴然となりつつある。成功者や富裕層以外の人民が政権に対して抱く憤懣や怨嗟、恨み辛みの矛先をまともに受けてはならない。“ガス抜き”の手段として最も適当なのが、日本だというわけさ。〇四年、靖国神社に参拝した小泉政権下、尖閣諸島に上陸した中国人七人を逮捕して、国外退去処分にした時には、中国の反発は限定的なものだった。あの当時、日本と中国の関係は、今よりもよほど悪かったにもかかわらず、だ。国内情勢を反映しているとみるべきだと思う。
――皆さん、日本は弱腰だとか、いろいろ言うけど、今回、日本が船長を釈放しなければ、尖閣諸島の海域で、中国海軍と海上保安庁、あるいは海上自衛隊の艦船が、砲火を交える事態もあった。ただ、釈放の判断が遅すぎた。一つは、民主党政権には、中国の政権中枢とのホットラインを持っていなかったこと。中枢同士の水面下の交渉なしで、「粛々と」勾留期限の延長を発表してしまった。中国は体面を重んじる国、そういう国民性だ。振り上げた拳は、絶対に自らは下ろさない。まして、国内情勢を考慮しなければならない状況だ。今後も、日本が「謝罪・賠償」に応じなければ、フジタの四人の社員も戻さない、レアアースは輸出しない、観光客は送り出さない…、強硬姿勢をますますエスカレートさせ続けるだろう。
――現政権の最後の頼みの綱は、小沢一郎さんかもしれない。日中国交回復の立役者、田中角栄の愛弟子、国会議員をゾロゾロ連れて訪中し、中国の副主席をごり押しで天皇陛下と接見させた、あの小沢さんなら、この事態を収拾できる可能性があるかも知れない。ただ、菅首相が小沢さんを引っ張り出せるか、小沢さんが応じるかだけどなぁ。
枕は、ここまで。
我が北海道は、全国の自治体の中で最悪の財政状態、夕張の二の舞になる可能性もあるレベルだそうな。そんな「会社」の「役員・監査役」の立場にある道議会の議員の先生たちが、来春の選挙を控えたこの時期に、大挙して海外視察にお出かけしている。
八月二十一日から二十八日までの八日間の日程で、スウェーデンとデンマークに七人、八月二十七日から九月五日にかけて、ノルウェー、デンマーク、オランダに九人、八月二十七日から九月三日にかけてデンマークに旅した六人の中には、旭川市選出の議員も含まれている。
この二十二人の道議、すべて民主党系の先生たち。その経費は一人八十五万円ほど。合計すると千八百七十万円也。中央では、政権交代を果たした民主党の国会議員たちが、“選挙目当ての演出だ”との批判が当っているかどうかは別にして、予算に回せるお金を絞り出そうと、必死で事業仕分けに取り組んでいるというにもかかわらず、地方の政権党の先生たちは、任期切れ前の駆け込み海外視察ですか。
道議の海外視察は、四年の任期中、経費の合計が百万円を超えなければ、何回出かけてもいいのだという。時節柄、一〇パーセントは節約しましょうということで、最近は九十万円に自粛しているそうな。それで、出かけられるほとんどの先生が、上限ぎりぎりの八十五万円程度に、上手に調整しているわけね。
そもそも、議員たち個々の「見聞を広める」ための費用を私たち選挙民が負担する必要はあるのだろうか。倒産の危機にある企業が、役員研修のために大金を注ぎ込むなんて話、聞いた覚えがないんですけど――。