嵐山の女性読者から葉書が届いた。本紙一月二十五日号、女性記者が書いたコロポックルについて、「一月一日、私も全国の店 年中無休営業反対!!」と賛意を示し、続けて「お正月前のもちつきのことですが、二十九日についていましたよね。昔は『クモチ』『クルシム』とか、九の付く日は避けてました。…二十九日はモチついちゃいけないのでしょうか」とある。「弊社で師走の二十九日に餅つきをする。一緒に餅をつきたい方、どうぞ」と書いた、昨年末の本欄に対する質問である。

 私の父は国鉄に勤めていた。大正十二年生まれ。国鉄が民営化される前、「勤務時間中に風呂に入っている」とか、「ただで汽車に乗っている」とか、すさまじい国鉄職員バッシングが巻き起こったが、それら「怠け者で、ずるい」鉄道マンのイメージとは対極にあるような男だった。四十年近く国鉄に勤めて退職した春、初めて東海道新幹線に乗った。「ミノル、日本の国鉄は、やっぱりすごいなぁ」と目尻を下げる親父の顔を憶えている。私が知っている鉄道マンの多くは、生真面目に「汽車を、安全に、正確な時間で走らせるのがオレたちの仕事だ」という誇りを持っていた、と思う。

 そんな父親だったから、年末年始はほとんど職場にいた。泊りの勤務も少なくなかった。勤務の合間を縫って餅つきをしなければならなかったのだろう、二十九日の餅つきが多かった気がする。言い伝えや風習を結構気にする質の母も「苦もちって言うけど、父さん、この日しかダメだって言うから」と諦めていた様子だった。

 一昨年から、友人の会社と合同で暮れの二十九日に餅つきをしている。その友人いわく、「地方によっては、二十九を『フク』と読ませて、『福餅』だから縁起が良いと、わざわざ二十九日に餅つきをするらしいよ」とのこと。弊社的に言えば、新年号の印刷を終え、販売店に発送した二十九日の夕方、社員そろって、知人や友人も来てくれて、新しい年に向けてペッタン ペッタン餅をつくという行事は、「福餅」に通じるんだろうなと勝手に思い込んでいる。答えになっただろうか、と心配しつつ枕はここまで。

(工藤 稔)

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