「風の宴」中止に思う「地域力」と、7候補の「道議会改革」を注視して投票を――

 大地震と大津波が起きた翌朝、農家の友人から電話が入った。「申しわけないけど、今日、中止にしたから」。電話の主は、農業生産法人・西神楽夢民村の島秀久村長。十二日夕に予定していた「夢民村の食卓『風の宴』」の取り止めを決めた旨の連絡だった。

 「風の宴」は、西神楽の農家八戸でつくる夢民村が、新酒が醸し上がるこの時期に、毎年開いている。自分たちが育てた酒造好適米「吟風」を使った新酒「風のささやき」のお披露目と、地域のばあちゃんや母さんが持ち寄った、新しい言葉で言えばスローフード、カボチャの煮付けだの、漬物だの、つまり農家の家庭料理を味わってもらおうという集い。今年で十二回目、開拓の時代から地域に伝わる伝統の獅子舞や餅つきも行われ、地元色たっぷりの宴には、百五十人が参加する予定だった。

 「迷ったさ。だけど、あの惨状を見たらなぁ…。宴でもないべさ…。せっかく料理してくれたばあちゃん達が一番かわいそうだけど、それは内輪のことだから…」。いつもは柔和な表情の島さんが、様々な思いを胸に難渋している姿が目に浮かんだ。私は「中止は、賢明な判断だと思うよ」と言って電話を切った。

 夢民村がまだ法人化する前のこと。一九九五年(平成七年)一月に起きた阪神淡路大震災の際に、後に夢民村の設立メンバーとなる農家の仲間が「金を送るだけが援助じゃないだろう」と語り合い、被災した小学生二十三人を迎え入れた。家を失い、学校にも通えなくなった子どもたちは、農家にホームステイして生活を共にしながら、約一カ月、西神楽の小学校に短期留学したのだった。そうした被災した子どもたちとの交流の体験も、今回、開催直前の宴中止を決断させた背景にあるのだと思う。

(工藤 稔)

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