芥川賞の受賞作を読まなくなったのは、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」か、宮本輝の「螢川」あたりからか。それでも話題作などは、気が向けばポツポツと読んでいたのだが、ここ十数年は全く読んでいなかった。
そんな事情で、まさか東京都知事のあの方が、芥川賞の選考委員に名を連ねているとは知らなかった。今回の第百四十六回の選考委員会を最後に退任す るのだそうだ。その理由を「刺激がない。駄作のオンパレード」「苦労して読んでますけど、バカみたいな作品ばっかりだよ」などと、あの方一流の乱暴な表現 で語ったと伝えられる。
その石原慎太郎都知事(79)の酷評を耳にしていたのだろう、今回、「共喰い」で芥川賞を受賞した田中慎弥さん(39)が、受賞決定後の記者会見で次のように話した。
「四回も落っことされた後ですから、ここらで断ってやるのが礼儀といえば礼儀ですが、私は礼儀を知らないので。もし断ったって聞いて、気の小さい選考委員が倒れたりなんかしたら都政が混乱しますんで、都知事閣下と都民各位のために、もらっといてやる、です」
(工藤 稔)
(全文は本紙または電子版でご覧ください。)
●電子版の購読は新聞オンライン.COMへ