覚悟はしている。僕が死んだら、五人か六人は、泣いてくれるかも知れないが、多くは「あの野郎、くたばったとよ」と鼻で笑っておしまいだろうと。死んでからほめられるよりも、生きてるうちにけなされる方がましだと思いたい。最期まで、へそ曲がりでいたい。突っ張っていたい。以上は、故人を批判するための枕である。

 「国内外の湿原研究、保全に尽力した北海道環境財団理事長の辻井達一さんが15日午前、前立腺がんのため死去した。81歳。東京都生まれ。高橋はるみ知事は同日の記者会見で『幅広い分野でお世話になった。得難い方で大変残念』と悼んだ」(北海道新聞十六日付朝刊)。

 十六日付の新聞各紙の見出しを並べると「湿原保全大きな足跡・賢明な利用訴え」(朝日)、「湿原の保護 情熱衰えず」(道新)、「湿原への愛情 晩年まで 保全の価値 世界に示す」(読売)、「湿原保全、人をつなぎ 関係者から悼む声」(毎日)と、立派な研究者の死を惜しみ、生前の功績を讃える記事ばかりだった。

 一連の「故人は偉かった」報道に強い違和感を持った。僕が知っている辻井達一氏は、天塩川水系のサンル川に計画されているサンダムについて、事業主体の国土交通省北海道開発局がアリバイづくりの目的で設置した魚類専門家会議の座長として、開発局のお膳立てに沿った議事進行に努めた、立派な御用学者としてである。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。