WBCのサムライジャパンや東京オリンピック招致の空々しい大騒ぎは、いわゆるひとつの“忍法猫だまし”であったのだ。二年前から続いている原発事故から、国民の目と意識を逸らせるための巧妙な作為なのだ。四月二日、読売新聞朝刊を見て納得した。日本一の部数を誇る全国紙の一面トップが、「長嶋、松井に 国民栄誉賞」ですよ。もう放射能の心配なんかしなくていいから、国民栄誉賞の話題でワッと盛り上がりましょう、みんなでミスタージャイアンツ長嶋とゴジラ松井を祝福しましょうよ。別に意味とかタイミングとか、いいじゃないすか。ひらめきよ、サプライズよ、ね、安倍総理。ああ日本を取り戻しすぎちゃって、美しい日本を通り越しちゃって、総白痴漫画大国ニッポンに向かってまっしぐらだー。枕はここまで。

 旭川市議会に「居眠りをする議員は、即、辞めさせてください」という陳情書が提出された。陳情の主旨に「居眠りする人間はどこの会社も雇わない。なぜ議員だけは許されるのか」「議会を傍聴に来る人は、毎回怒って帰ります。こんな議員では旭川市は良くならないでしょう」とある。陳情を提出した森本明子さんを江丹別町芳野の自宅に訪ねた。

 森本さんは、一九三五年(昭和十年)、東京・浅草の生まれ。八歳のとき父母のいる満州に渡った。戦後、親戚がいた長野県更科に引き揚げ、その後、家族で食糧事情が比較的良かった北海道に移住、江丹別に開拓農家として入植した。芳野の農家に嫁いで五十二年、「三年前、子どもと兄弟たちが金婚式のお祝いをしてくれた」と笑う。

 議会を傍聴し始めたのは、芳野地区に旭川市が廃棄物処分場の造成を計画していると知ってからだ。「それまでは、農家の仕事が忙しかったからね。だけど、ゴミ処理場の問題が出てきたころ、ちょうど農家をやめたから時間ができた。処理場ができた平成十五年から、本会議はほとんど傍聴しているの。傍聴席に私一人だけということもあるよ。去年はちょっと病気して行けなくて、しばらくぶりに傍聴したら、ある議員さんに『どうかしたかと心配した』と言われてね」と笑う。

(工藤 稔)

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