恐れ入った。見上げた商人根性ではないか。世の商売に関わる方たちは、安倍晋三首相の垢をいただいて、煎じて飲まなければならない。七日付の読売新聞の記事――。

 安倍首相は6日、世界最高峰エベレスト(8848メートル)の最高齢登頂に成功したプロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さん(80)をたたえ、顕著な業績を上げた冒険家に贈る「三浦雄一郎記念日本冒険家大賞」を創設することを決めた。

 首相が同日、首相官邸で三浦さんから登頂の報告を受けた際に伝え、三浦さんは「大変、光栄です」と応じた。

 新たな賞は国民栄誉賞などと同様、「内閣総理大臣表彰」の一つで、三浦さんも選考に加わる予定だ。個人の名を冠する賞は「野口英世アフリカ賞」に続き二例目となる。

 三浦さんは七十歳でのエベレスト登頂に成功した二〇〇三年に内閣総理大臣表彰を受けているため、首相は本人を表彰する代わりに賞を創設することにした。

 そもそもは、私と違ってへそ曲がりではない家人でさえ、八十歳の三浦さんが、大勢の“御付”に取り囲まれ、支えられながら頂上を目指す姿を映し出すテレビ画面に顔をしかめていたのだ。いわく――

 「いったい、周りに何十人の人がいて、何百本の酸素ボンベを消費して、どれほどの大金を使っているのよ。これって、登山、登頂って言えるのかしら」

 「高齢の人が気分的に真似をして、遭難事故が増えなければいいけれど。独りで挑戦するのはご自由だし、一家の商売なのだろうけど、負の影響を与えるのは社会の迷惑よ」

 読売新聞はじめとする大新聞の記事には、この八十歳、大騒ぎエベレスト行にどれほどの資金を要したか、私が知る限り言及はなかった。だが、週刊文春六月十三日号が書いてくれた。この登山の費用は、約一億五千万円。原発メーカーも大口スポンサーだそうな。人員は、医者やコックなどのシェルパを含めると二十七人の大所帯だったという。まさに「大名登山」、「人海戦術」の賜物といえるイベントだったのだ。しかも、下山はヘリコプターを使い、油を浪費して。

(工藤 稔)

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