安倍晋三首相が米国議会で演説するというニュースを伝えるNHKテレビのアナウンサーが、「いわゆる従軍慰安婦問題について…」と原稿を読んだ。一緒にテレビを見ていた家人が、「今、いわゆるって言った?」と首を傾げる。「いわゆるって、どういう意味の枕詞(まくらことば)として使っているのかしら…」と。
手元の辞書を引くと、その意味は「世に言われている。俗に言う。よく言う」とある。つまり、「従軍慰安婦問題」というのは、正確にはそのことが問題としてあるかどうか不明だが、世の中ではその問題はあるやに言われている、というニュアンスを伝えようとしているのだろう、と私は受け止めた。とにかく従軍慰安婦問題に「いわゆる」という枕詞が冠せられるのを聞くのは初めて。強い違和感を覚えた。
その後の四月三十日付の読売新聞夕刊、「首相演説 称賛の45分間」の大見出しを付けた一面トップ記事の中に、その枕詞があった。以下、引用する。
――(前略)女性の人権侵害を巡っては、首相が「紛争下、常に傷ついたのは女性だった。私たちの時代にこそ、女性の人権が侵されない世の中を実現しなければならない」と強調すると、議員が起立して拍手を送った。米国では、韓国系団体がいわゆる従軍慰安婦問題などに関し、首相による「公式謝罪」を求めて活動を活発化させているが、首相の発言は(米議会では・筆者注)前向きにとらえられたようだ。(後略)
このトップ記事の下に載った関連記事にも、「いわゆる従軍慰安婦問題」という文言が使われている。
(工藤 稔)
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