米国の要請に従って自衛隊が地球の裏側にまで派遣され、米軍の補完部隊として戦争に加担できるようにする安全保障関連法案が十七日午後、参院の特別委員会で可決された。仕事をしながら、主に車の中で、NHKラジオの中継を通して、その過程のおおよそを聞いた。その印象を少々――

 テレビを見ていた人は混乱の状況が見えるから理解できたのかも知れないが、ラジオでは「可決」の瞬間は、全く分からなかった。飛び交う怒号の音声が流れる中で、アナウンサーが「委員長席の周りを与野党の委員が取り囲んでいます」「与党議員が起立しています」「何らかの採決が行われた模様です」「かなり短時間で採決が行われたものと思われます」などと伝えた。

 間を置かずに、抜き打ち採決をリードした佐藤正久・自民党筆頭理事にインタビュー。記者は可決されたという前提の質問を繰り返し、佐藤氏も何事もなかったかのように安保法制の正当性を誇らしげに語った。

 ラジオを聞いていた私は、正当な採決が行われ、可決したのかどうか分からない中で、続いてマイクを向けられた福山哲郎理事(民主)の「可決はされてません。委員長が何を言ったか全くわからない、あんな暴力的なものが採決と認められるなら、日本の民主主義はどうなるのか」と語気を強めるのを聞いて、ようやく、ああ強行採決が成功したんだな、と理解した。

 その後のNHKは、大混乱の中での採決には触れず、「与党の自民党と公明党、そして次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の野党三党が賛成して、安全保障関連法案は参院の特別委員会で可決されました」と普通に報道し続けた。見上げた公共放送である。

(工藤 稔)

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