アメリカ軍は、沖縄から出て行きたくないんだと思う。例えば、沖縄の基地負担を日本全国で平等に肩代わりすると決めて、「オスプレイの訓練は、北海道でどうぞ」とお招きしても、米軍はいらっしゃらないだろう。安全保障上の地理的優位性だのヘチマだの、もったいぶった理由を様々並べるだろうが、要は、沖縄くらい「いい場所」はないのだ。

 まず、温かい。真冬でも半袖シャツに短パンで過ごせる。そのいい島の、さらに一番いい場所、平らな土地、真ん中をすでに占領している。なんたって日本中から、今や中国はじめ東南アジアからも観光客が押し寄せる、風光明媚な観光地だ。パラダイスのど真ん中に職場がある。何が悲しくて、冬になるとタイヤを履き替えなければいけない極寒の北海道に引っ越さなければならない?

 二月二十九日から、三泊四日の日程で沖縄に行って来た。沖縄本島の面積の一八%を米軍施設が占める。三千七百㍍の滑走路二本を持つ、海外最大の米軍基地・嘉手納基地にいたっては、嘉手納町の実に八三%が基地である。県庁がある那覇市から、それらの基地に遠慮するように走る国道を通って、新基地が建設される予定の名護市辺野古に向かった。

 断わっておくが、「世界一危険な飛行場」と呼ばれる普天間基地が、辺野古に移設されるわけではない。日米両政府が一九九六年(平成八年)、辺野古に新たな巨大基地を建設することを条件に、米国が普天間を返還することで合意した。しかも、建設費は日本が持つ。私たちの税金で、米軍のための新基地を造って差し上げましょうというわけだ。

 「移設」と言うと、何となく既成事実を認める感覚で、「あらそうなの」となりがち。言葉のマジックである。事実は全く異なる。世界一危険で、ボロボロの、早晩閉鎖しなければならない飛行場を、ただで、ピカピカの巨大基地と交換して上げるのよ。ところが、NHKも読売も朝日も毎日も、道新でさえ、「移設」という言葉を使う。「誤報」に近いと私は思う。

 「これ以上の米軍基地はごめんさあ」という沖縄の人たちの声を取材して、旭川に帰り着いた翌日の四日、辺野古を巡る国と県の裁判で、安倍晋三首相が福岡高裁那覇支部が示した和解案の受け入れを表明した。報道によれば、安倍首相と沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が同日、首相官邸で会談し、辺野古で続いている建設工事を中断した上で、解決に向けて話し合うことを確認したという。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。