家人が呆然とした口調でつぶやく。「NHKの視聴料、払うのやめようか」。二十日午後零時五十分のBSニュースが、沖縄の米軍嘉手納基地前で「なぜ沖縄だけがこんな目に合わなければならないの」と目を赤くして抗議の声を上げる女性を映し出した。アナウンサーは容疑者を「米軍関係者」だと表現し、「元海兵隊員」とは伝えなかった。
私はチャンネルを総合テレビに変えた。午後一時のニュースがどんなふうに報じるか、と思って。だが、沖縄の女性の死体遺棄容疑で元・米海兵隊員が逮捕されたというニュースはなかった。その代わりに、安倍首相が「すべての女性が輝く社会づくり本部」の会議だかで何やらしゃべったというニュースもどきを、首相の映像と併せてダラダラと流し続けた。
前日十九日夜は会合で、私は見ることができなかったのだが、家人によれば午後七時の「ニュース7」は、トップでこの事件を扱いながら、オバマ大統領の訪日への影響にも、沖縄の反基地のうねりが高まるだろうことにも、一切触れなかったという。「何かを隠しているみたいな、おかしなニュースだった。私のように政治に疎いものでも、もしかしたらこの事件は辺野古の新基地計画を止めるかも知れない、くらいのことは考えるのに」。そして、「いっそのことテレビやめようか、ポアロやコロンボを見られなくなるのは辛いけど…」の話になったというわけだ。
ミステリー好きの家人だが、どうも本気でテレビを見るのをやめようと考え始めたようだ。「あべ様のNHK」も度が過ぎると贔屓(ひいき)の引き倒しになるのだよ、籾井勝人会長。
そうだ、NHKで思い出した、先日ね、夕方の「ほっとニュース北海道」でね、札幌に「ふくろうカフェ」なるものがあって、生きてるフクロウを見て「癒される」とか何とか、レポーターが中継しているのよ。店に陳列している数種類のフクロウが紹介されていたが、その名前から日本に生息する種ではないようだ。いいさ、違法じゃなければ、それで商売するのも許されるのだろう。私は認めないけれど。で、このふくろうカフェを取り上げる言い訳が必要だったのだろう、番組の最後の方で、「五月十日から愛鳥週間が始まります」と来た。おいおい、大丈夫かあ? いやしくも報道の世界で飯を食う人間だろう? 愛鳥週間とふくろうカフェの間に、どんな関連があるっていうんだあ? これも籾井人事のなせるわざなのかあ…。枕はここまで。
(工藤 稔)
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