市政初のトリプル選挙が終わった。結果は、一、二面の記事の通り。一年九カ月も続くコロナ禍の下、市長、道議、市議の三つの選挙戦が同時に行われた割に、静かだった印象だ。もちろん、密を避ける、人を集めないという、物理的な理由もあったのだろうが、「選挙やってる場合じゃない」という心理的な理由もあったのだと感じる。

 それでも、「情勢はどうですか」などの電話やメールを幾人かからいただいた。「私は、基本的に自民党支持なんですけど」という六十代女性から、こんな電話があった。

 ――道新の討論会の記事(九月十五日付朝刊)を読んだんですけど、今津さんが国とのパイプを使って、新型コロナワクチンを確保するって、変じゃないですか? 与党の政治家がいる地域にはワクチンがたくさん配られて、野党の市長のまちには少ないわけ? 税金は同じように納めているのに。野党候補の笠木さんが「政府に働きかける」と言うなら分かりますよ。今津さんがそれを選挙の公約に掲げるなんて、絶対におかしい。あさひかわ新聞に、書いてくださいよ。

 怒っている彼女が言う「道新の討論会」は、北海道新聞旭川支社が告示前の十三日に、聴衆を入れずに開催した市長選立候補予定者討論会のこと。同支社の報道部長が司会を務め、笠木薫(64)、今津寛介(44)両氏が、新型コロナウイルス対策や西川将人市政への評価、人口減対策などで論戦を繰り広げた。

 「新型コロナ対策」について、今津氏は、旭川市民の一回目のワクチン接種率が道内主要十都市の中で最低だとして、次のように述べる。

 ――今までの市政には道政、国政とのルートがなかったのだと思いますが、私は違います。自身の経験と人脈をフルに発揮し、国や鈴木(直道)知事、近郊市町村にお願いして人員を確保してもらい、接種体制を強化します。

 政権与党とのつながりからワクチン担当大臣や知事と密に交渉してワクチン確保に努め、希望する全世代への接種を加速させます。(後略)

 もちろん、昔からあったし、そのために業界団体などが選挙を支援する構造は連綿と続いている。だが、今ほどあからさまに利益誘導を公約のごとく誇示することはなかったと思う。それは、言わずもがなの、裏の話なのだ。考えてみればいい、電話の女性が指摘するように、税金は首長が与党だろうが野党だろうが、国民から等しく徴収されている。国が行う施策の原資は、言うまでもなく私たちの血税だ。もしも、そんな依怙贔屓(えこひいき)が行われているとしたら、明らかな憲法第十四条「法の下の平等」違反ではないか。

(工藤 稔)

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