大きな手術の後遺症のようなものだと思い込んでいたが、実は新型コロナに感染したせいなのではないか、と考えるようになった。きわめて個人的なことだが、もしかすると同じ体験をされている方がいらっしゃるかも知れない。書いてみようと思う。お付き合い願う。

 退院してから食べ物、飲み物の好みが大きく変わったのだ。入院したのは昨年六月三日。前の週に、何気なく、しばらく検査をしていないし、最近ちょっと胃が重い気がするから、胃カメラの検査を受けようと思い立ち、掛かりつけ医に紹介された胃腸科クリニックでエコー検査を受けたのが、そもそもの始まり。

 小さな個人病院だが、後から聞けば、内視鏡の分野では名医として知られる医師なのだそうだ。実は、その前に掛かりつけ医に紹介された胃腸科医院に電話で予約しようとして、余りの対応の悪さにケンカして、「それじゃあ、混んでいるかもしれないけど」と紹介されたのがこのクリニックだった。先の病院に「対応を悪くしてくれてありがとう」と退院後、お礼の菓子折りを届けようかと考えたけど、家人に「イヤミだからやめなさい」と止められた。

 胃カメラを飲む前のエコー検査で、「変なものがあるゾ」と医師が見つけて、「明日の朝一番で、CТ検査を受けるように」と指示された。その夜は、普通に晩酌をして、家人にも内緒で指示された日赤病院に出かけたのだった。CТ検査を受けて、外来の待合ロビーに帰って来ると、車いすが待っていた。そのままHCU(高度治療室)に入れられた。車いすの上から家人に電話を入れると、「アンタ、どこにいるの?」と言うわけ。

 動脈瘤は腹から胸にかけて三カ所あった。六月と七月に、いずれもカテーテルによるステントグラフト(人工血管)内挿手術を行った。手術後は、供される三度の食事は完食。薄味だが、とても美味しくいただいた。ベッドで寝ているだけだからさほどお腹もすかない。本を読んで、たまにパソコンを叩いて暇をつぶす日々だった。

 七月末に一度退院して、十月十四日に三度目の入院。十七日に手術を受けた。今度は胸を三十㌢ほど切る、八時間半の開腹手術だった。術後三日ほど意識がなかったそうだ。それから一カ月ほど入院するのだが、思い返せば旺盛とまではいかないが、食欲はそこそこあった。

 十一月十八日に退院。間もなく、二世帯住宅の隣に住む孫が保育園で新型コロナに感染し、瞬く間に家人と看病のためにフィンランドから帰国していた娘にもうつり、高熱を発する。療養中の筆者は目立った症状はなかったが、お腹がゆるくなり、血圧が百を切るくらいに下がった。十一月二十二日、看護師の経験がある娘が救急車を呼び、日赤の緊急外来へ。そこで鼻に棒を突っ込まれる検査を受けて「陽性」と診断され、大きな換気装置が設置された隔離病棟に入院となった。

 それから約二週間、まったく食欲がなく、看護師がおかゆ、おにぎりと工夫してくれたが、箸が伸びなかった。約二週間、ほとんど絶食状態のまま十二月五日に退院。大好物の寿司も、食前の期待が大きいわりに食べられず、炊き立ての白いご飯よりも、おかゆに梅干しの方が食が進む。朝は、トーストにバターを塗って、目玉焼きとウインナー、果物とヨーグルト、バナナミルクというメニューが定番となった。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。