久しぶりに、今春「私立」から「市立」になった旭川大学について書く。市民団体「旭川に公立『ものづくり大学』の開設を目指す市民の会」(伊藤友一会長=略称・ものづくり市民の会)が昨年九月十九日に旭川市を通じて旭川市立大学(三上隆学長)に提出していた「要望」への回答が今月十九日にメールで届いた。

 これまでの経緯を簡単に説明すると――。

 ものづくり市民の会は、旭川市を含む道北地域のものづくり・デザイン分野の学びをけん引してきた東海大学旭川キャンパス閉鎖の負の影響を危惧し、二〇一一年から、公立のデザイン系の大学設置を求めて運動を展開した。途中、私立旭川大が「公立化」を要望し、市議会での議論を経て、公立化が認められ、ものづくり・デザイン系の新学部が開設されることになった。市と議会、ものづくり市民の会の三者の協議の中で、新学部の名称は「地域創造デザイン学部」、学科は「ものづくりデザイン学科」と「地域社会デザイン学科」にすると決まった。

 ところが二三年五月、市立大学が発表した新学部設置基本計画では、「地域創造学部」「地域創造学科」とデザインの文字が削除され、「アントレプレナー」と「まちづくりプランナー」の二つのコースが設けられる、と変更されていた。

 猛反発した市民の会は、緊急シンポジウムや講演会を開催し、昨年九月、①学部学科の名称を元に戻す、②ものづくり・デザインのカリキュラムを補充する、③コースにデザインコースを追加する、④デザインの専門家をアドバイザーとして任命する、⑤大学運営に関して市と大学、市民が協議する機関の設置の五項目の「要望」を提出していた。

 四カ月をかけて届いた、その回答に見るべきモノがあるとすれば、次の一文だろう。

 ――「デザイン」に対する皆様の思いを踏まえたいと考えておりますので、コース名に「デザイン」の説明を特段必要としない名称が考えられる際には採用したいと考えており、例えば「地域デザインコース」という名称とすることを想定しております。

 ものづくり市民の会のメンバーが集まり協議した。意見は様々。「自分たちの考えを明確に発表して、もう新学部からは手を引くべき」という人もいれば、「『地域デザインコース』のカリキュラムを充実させられれば、私たちの求める新学部になり得る」と主張するメンバーも。さて…。

 小欄で何度か書いたが、市民と「協働」するという気は、この大学にはないようだ。要望⑤の回答は、「まずは本学を卒業したОBやОGにステークホルダーとして関わってもらいながら、大学における教育について社会人になってから気づいたことや改善点などの意見をいただき、大学における教育の質の向上に向けてフィードバックしていきたいと考えております」だと。要は、あんたたちと話し合う気はありません、と拒否している。市民の税金によって運営される大学であることを忘れているようだ。さすが、頭が高い旭川市の大学だなあ。江戸時代の“おかみ”そのものだぜ。

(工藤 稔)

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