日常的にメールのやり取りをしている友人でもある読者から、一月十六日号の小欄「元日の能登半島地震、私たちは本当に『原発回帰』を受け入れるのか」と、二十三日号『ついに、辺野古・大浦湾の埋め立てが始まった――』の感想が届いた。彼は福島の出身。毎年、「三・一一」には現地に足を運んで“定点検証”を続けている。以下、彼からのメールの一部。

 ――貴兄の「沖縄ばなし」久しぶりですね。それにつけても、その文中にあった「沖縄の話、いいかげんにしたら」を見て、我が故郷「福島」に対する少なからぬ旭川市民の「雰囲気」とダブって感じながら読ませてもらいました。

 残念ですが、やはり、この問題を自分のこととして捉えてくれるひとは多くはないということなのでしょうかね。

 福島の話をしても、「もう復興は進んでるんでしょ」という直の言葉と「いつまでそんなこと言ってんだい!」という、相手の顔つきに表れる「心の声」が同時に聞こえるような気がしています。

 能登半島の志賀原発のことだけを見ても、福島=原発問題は、泊原発や廃棄物貯蔵施設問題を抱える道民にとっても、人ごとなどではないと思うのですが…。(後略・引用終わり)

 元日の能登半島地震では、志賀町は最大震度七、同町にある北陸電力志賀原発の一号機地下で震度五強を観測。一、二号機の変圧器の配管などが破損し、外部電源の一部を喪失。壊れた変圧器から絶縁油一万九千八百㍑が海に漏洩した。一、二号機の使用済み核燃料プールの冷却水計四百二十一㍑が床にあふれ、一号機の冷却ポンプが一時停止。さらに、原発周辺のモニタリングポストは最大十八カ所が測定不能に陥った。

 中日新聞ウェブサイトに載った、原子力安全が専門の小出裕章・元京大原子炉実験所助教のインタビュー記事を引用しよう。

 ――能登半島地震の発生時、志賀原発が稼働中だったら、どんな被害が出た可能性があるか。
 小出 志賀原発が十年にもわたり停止していたことが何より幸いだった。原発の使用済み燃料は発熱しているが、十年たつと発熱量は運転停止直後に比べ、千分の一以下に低下する。今回の地震で志賀原発は外部電源の一部系統が使えなくなり、非常用発電機も一部停止した。稼働していたら、福島第一原発と同様の経過をたどったかもしれない。

 ――具体的にどのようなプロセスでそうなるのか。

 小出 出力百万キロワットの原発の場合、原子炉の中では、ウランが核分裂して三倍の三百万キロワット分の発熱をしている。大地震の際は制御棒を入れて核分裂反応を止めるが、実は三百万キロワットのうちの二十一万キロワット分の発熱は、ウランの核分裂で出ているわけではない。それまでに生成された「核分裂生成物」が原子炉の中に膨大にたまっており、「崩壊熱」を出している。
 制御棒でウランの核分裂反応を止めても、二十一万キロワット分の崩壊熱は止められない。膨大な発熱だ。福島でも核分裂反応は止まったが、崩壊熱を止めることができないまま、電源が何もなくなり、冷やせないために炉心が溶けて、(放射性物質が)大量に出てしまった。

 ――停止中の原発ではどうなるのか。

 小出 核分裂生成物は約二百種類の放射性物質の集合体で、寿命の長い物質もあれば、半減するまでに八日と寿命が短い物質もある。十年もたつと、発熱する放射性核種がほとんど残っていない。二十一万キロワット分の崩壊熱が千分の一になると二百十キロワット。一キロワットの電熱器二百個分ぐらいを冷やせればいいことになる。仮に全電源が喪失して冷却できなくなっても、巨大な使用済み核燃料プールにつかっているわけだから、水が干上がって使用済み燃料が溶けるような事態にはならない。

(中略)
 ――昨年三月、原子力規制委は北電(北陸電力)の「敷地内に活断層はない」という主張を妥当と判断し、志賀原発2号機再稼働への道を開いた。だが、そもそも原発周辺のすべての断層を正確に把握し、耐震設計をすることはできるのか。
 小出 どこに活断層があり、活動度がどれだけだ、ということが完璧に分かれば、地震が予知できる。しかし地震を予知できた試しはかつて一度もない。今回、活断層が百五十キロにわたって連動した可能性が指摘されている。こういうことが起きて「想定外」だったと言う。だが、重大な結果を招く原発に関して想定外なんて言い方はしてはいけない。

 日本は国土面積が世界の〇・二五%しかない小さな国だが、世界の地震の一割から二割が起きている。そんな場所に五十七基もの原発を建ててしまったことこそ誤りだったと知るべきだ。

 今回一番学ばなければいけないことは、志賀原発が止まっていてよかったということ。百万キロワットの原発が一年間稼働すれば、広島原爆がつくった死の灰の千発分の核分裂生成物ができる。運転中に地震に襲われるのとは全然違うことを皆さんに分かってほしい。(引用終わり)

 一月三十一日付の道新一面の記事。見出しは「原発避難路 過半が寸断」「能登地震で志賀7路線」。以下記事を引用しよう。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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