国会議員の税金がかからない「裏金」疑惑に比べればカワイイものと言えなくもない。それでも、いわば権力を持っている、私たち普通の庶民ではない側のヤツラが、公金を使って「視察」という名目で物見遊山の旅行に出かけると聞けば、チェックを入れたくなる。特に、ここ三年ほど、コロナ禍で飲食をともなう会合などが激減していたから、コロナ明けの祝祭気分による暴発的行為には警戒が必要だし。

 旭川市議会の議員十一人が五月一日から三日までの二泊三日の日程で、鹿児島県南さつま市に出かけるという。南さつま市は旭川市の姉妹都市。二〇一五年に姉妹都市の提携を結び、旭川冬まつりや北の恵み食べマルシェに南さつま市から訪問団が来旭。旭川市からは、南さつま市の吹上浜砂の祭典に砂像制作隊が参加するなどの交流が続いている。

 今回の南さつま市訪問団は、今津寛介市長の代理として中村寧副市長、福居秀雄市議会議長のほか、商工会議所や旭川観光コンベンション協会、冬まつりや食べマルシェの実行委員会の関係者ら総勢二十一人が市代表団を組んで訪薩する。その中に十人の市議が含まれる。自民党市民会議五人、民主市民連合二人、公明党二人、共産党一人。無党派Gと無所属を除く超党派の議員団になる。

 総合政策部都市交流課によると、費用は航空券や宿泊代など約十二万円。福居議長は、公務ということで公費から支出されるそうな。さて、他の市議たちは、月額八万円が会派に支給される「政務活動費」が使えるのか、という話になる。

 「政務活動費執行の手引き」によると、政務活動費は、会派及び無所属議員が行う「調査研究、研修、広報、広聴、住民相談、要請、陳情、各種会議への参加等、市政の課題及び市民の意思を把握し、市政に反映させる活動その他、住民福祉の増進を図るために必要な活動に要する経費に対して交付する」とある。

 代表団の行程表を見ると、一日目は羽田を経由して午後三時十五分に鹿児島空港着。ホテルに向かう途中に、百貨店・山形屋で開かれている「北海道物産展」を視察する予定。翌二日は、吹上浜の砂の祭典会場を視察、その後は南さつま市職員の案内で市内を視察し、夜は砂の祭典前夜祭と交流会に出席。最終日は午前中の砂の祭典オープニングセレモニーに出席し、午後には鹿児島を離れる。
 市議十人の“団体旅行”が、政務活動費を使う「調査研究」あるいは、「市政の課題及び市民の意思を把握し、市政に反映させる活動」と呼べるものなのか。はなはだ疑問である。

 政務活動費を使った場合、会派の経理責任者がつくる会計帳簿に記入し、領収書などの証拠書類を残さなければならない。二〇一八年の南さつま市訪問団に参加した当時の市議三人の支出表によると、「行政視察と市代表訪問団行動」などの名目で日当二千四百円を含めて十万三千円から十一万七千円を「調査研究費」として受け取っている。

 議会事務局に聞けば、「この訪問団への参加が、政務活動費として認められるかどうかは、手引書の内容に合致しているかどうかです」との回答だった。それぞれが個々の市政課題のために出かけるのではなく、団体で行動し、南さつま市の担当者がピックアップした視察場所を訪問する。これが「個人視察」と認められるのか、ということだ。議会事務局としては、微妙なところ、という意味だろう。今回の十人が、どんな対応をするのか、注目しよう。

 ところで、冒頭でふれた国会議員の“ふところ”の話。こちとら微々たる年金から高い税金をむしり取られてヒーヒー言っているのにさ、高級国民の国会議員の先生は、月額百二十九万四千円の歳費。プラス年二回の賞与、年間約六百万円。加えて、領収書もなーんにも不要の文書通信交通滞在費の一千二百万円、それから立法事務費の七百八十万円、ぜーんぶ足すと軽く四千万円を超える金額になる。

(工藤 稔)

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