画像アーサー・ビナード氏が序を寄せる
旭川では36年ぶりの小熊詩集

 旭川にゆかりの詩人、小熊秀雄(1901―1940)の名を語り継ぎ、全国の詩人に創作の目標を提供しようと活動している小熊秀雄賞市民実行委員会(松田忠男会長)が「小熊秀雄詩撰 星の光りのように」を刊行した。これまで出版された小熊の詩集とはひと味違う、旭川の小熊ファンならではの視点で編集された詩集は、全国から注目を集めそうだ。

同実行委員会は、四十回にわたって賞を運営してきた旭川文化団体協議会(文団協)が、会員の高齢化や資金難などから賞の廃止を決めた後、「旭川の財産である小熊賞を継続しよう」と集まった市民有志が呼びかけて昨年秋、新たな運営組織として発足。市内外から約百四十の法人・個人が会員登録し、賞の継続を実現した。現在、来年四月に発表される第四十一回の小熊秀雄賞の全国公募が行われている。

 詩集「星の光りのように」は、同実行委員会が、小熊の名や作品が次第に忘れられて行く傾向に危機感を抱き、特に若い世代にも感性あふれる小熊の作品に触れてもらおうと、北海道文化財団(札幌・磯田憲一理事長)の協力を得て刊行した。実行委のメンバーの中の六人が編集委員会をつくり、今年五月から作業をスタート。これまで刊行されていた小熊の詩集や歴史的資料を参考にしながら、「旭川から出版する詩集としての特徴を持たせる」「多くの市民、特に若い読者にも届ける配慮をする」などを編集方針に、句読点の一つ一つについて議論するほどの情熱を注ぎ込み、五十二編の詩を収録した詩集を完成させた。

 旭川での小熊の詩集刊行は、一九七一年(昭和四十六年)に文団協が創立二十周年記念として発行して以来、三十六年ぶりのこと。

  タイトルの「星の光りのように」は、この詩集にも収録されている作品。編集委員たちの間で「一つの作品に小熊の詩集を代表させていいのか」「小熊秀雄詩集でいいのではないか」という意見もあって激論が交わされたが、「晩年に『火星探検』という漫画の原作を書いている小熊の創作活動を的確に表現している」「小熊の作品には星がよくうたわれている。プロレタリア詩人という見方が強調されるが、小熊のロマンチックな心情を知ってもらうためにもふさわしい」などの理由からタイトルに決まった。

 編集委員の一人、小峯久希さん(36)は「今の日本で、旭川で、小熊が生きた当時と変わらない、普遍的なものを感じてもらえるような詩集を編みたい、そういう思いで一生懸命に取り組みました。読んだ方に『あぁ、そうそう、そうだよね』と感じてもらえれば、と思います」と話している。

 A5判変形で百六十六ページ。中原中也賞を受賞している米国生まれの詩人、アーサー・ビナード氏が序を寄せており、巻末には収録作品の初出一覧や略年譜が付けられている。装丁は、旭川在住の造形作家、藤井忠行さんによる。

 千二百冊印刷。千円(税込み)で、二十日から、市内の冨貴堂本店などに配本される予定だ。問い合わせは、事務局長の高田雍介さん(電話61―2731)まで。