画像 唇と歯ぐきの間に挟んで口を開け閉めするだけで、食べ物をうまく飲み込めない摂食嚥下(えんげ)障害、脳卒中や睡眠時無呼吸症候群などの予防や治療に効果があるとされる医療器具「パタカラ」が医師や歯科医師の注目を集めている。この器具は、数年前に東京の歯科医師・秋広良昭さんが開発したが、市内で使っている医療機関はまだそれほど多くない。その優れた効果を実感し、普及に力を入れる上川中部地域歯科保健推進協議会の八重樫和秀理事長(49)=かむい歯科診療所院長=に聞いた。

 パタカラは軟質プラスチック製。唇の形をした部分を、唇と歯ぐきの間に挟んで装着し、口を開け閉めさせて使用する。あごの力は使えず、開閉には唇周辺の筋肉を力を入れて動かさなければならないため、この筋肉が鍛えられる。本体についているひものようなものを左右に引っ張ることで、上下だけでなく横方向にも負荷をかけることができる。

画像 このパタカラを脳梗塞の後遺症で口が閉まらず、よだれが出る状態の患者に、装着してもらい、一回数分で一日三、四回、三~四週間ほど開閉運動を続けさせたところ、口が締まり、よだれも止まったなどの例が報告されている。同じ症状が出たある大学医学部の教授が、最新鋭の高度な治療を施してもなかなか良くならなかったのが、パタカラで効果が出たため、医学界でもその効果が広まった。

 当初、パタカラの使用は保険の適用外だったが、その効果を国も認め、現在は保険の効く医療器具として認められている。口の周辺の筋肉を引き締めるため、美容器具としても注目され、インターネットなどで販売もされている。基本的な構造は医療用と変わらないという。

 八重樫理事長は「顔の温度変化をサーモグラフで見ると、顔面マッサージなどではほとんど変化がなかったのに対し、パタカラの使用後は唇周辺にとどまらず、鼻から頭にかけて真っ赤に変わり、顔全体の血流が良くなっていることがはっきり分かります」とその効果を科学的データを示して語る。

画像 「私も最初パタカラを見た時は、効果があるのか疑問でした。しかし開発者が歯学界では高名な秋広先生だと分かった時“これは間違いない”と確信しました」と話し、東京や札幌で開かれた秋広さんによる説明会には迷わず参加した。製作者から直接アドバイスを受けたことで、普及に力を入れようと思ったそうだ。

 口や舌の筋肉の締まりが良くなることで、口臭やいびきにも効果があるというパタカラに関する問い合わせは、かむい歯科診療所(電話61―6480)へ。