◆増えている「事前葬談」

img葬祭サービスの淤見(神楽五ノ五、淤見政儀社長)は昨年十二月、自社所有の葬祭会場「淤見せせらぎホール」を改修し、新たに僧侶控え室と遺体搬送用リフトを設置したほか、生前に葬儀の相談が出来る「事前葬談室」を新設した。

淤見せせらぎホールはホーマック神楽店の向かいに位置し、隣には神楽郵便局がある。新設された「事前葬談室」は郵便局側にあり、部屋の二つの面に大きなガラス窓が配されている。郵便局の利用者から室内が見える開放的な造りだ。社屋に相談コーナーを設けている葬儀社は多いが、独立した部屋まで用意しているのは珍しい。室内には葬儀についての心構えなどを説明するDVDや書籍などの資料が用意されている。

淤見社長は「葬儀について、事前にゆっくりと相談できる場所を提供したかった。ビジネスうんぬんということではなく、葬儀に関して分からないことがあれば、気軽に利用して欲しい」と話している。

同社では以前に比べ、葬儀についての事前相談が多くなっており、扱う葬儀の三割ほどが事前相談によるものという。「かつては寺院や地区会館などで行うことが多かった。事前相談で当社のホールを見ていただく機会を設けており、今では当社葬儀の六割ほどを自社ホールで行っている」(淤見社長)。

相談内容で多いのは、やはり予算について。また家族葬など、小人数での葬儀を希望する人からの相談も多い。淤見社長は「時代を背景に、全体的には『お金をなるべくかけずに…』という相談が多くなっている。そうした需要に応えて消費者から選択される葬儀屋になるためにも、事前相談は重要と考えています」と見解を語る。

◆社員全員が「葬祭ディレクター」

厚生労働省が認定する資格試験に「葬祭ディレクター」があるが、同社では昨年九月に事務員がこの試験に合格。これで社長をはじめ社員全員(八人)が有資格者となった。最後に合格した事務員は、直接は式に関わらないポジションではあるが、淤見社長は「葬祭業界の仕事は電話を受けるところから始まります。ですから事務員も資格を取得し、社員の誰でも基礎的な対応ができるようにすべきだと考えています。事務職員の賛成・協力があって、全員有資格者が実現できました」としている。

◆映画館なみのスクリーン

img同社二階にある百人収容のホールには「メモリアルスクリーン」が設置されている。これにより、祭壇後方の壁面全体に生前の映像などを投影することが可能だ。二階のホールは平成十二年に完成したが、このスクリーンが出来たのは平成十七年。「ゆくゆくは導入したいと、ホールの設計当初からスクリーン部分の天井を高くしておいた」(淤見社長)。

上からスクリーンが降りてくる方式は他の斎場でもしばしば見受けるが、同社のメモリアルスクリーンは祭壇後方に投影することにより、祭壇全体がひとつのスクリーンとなるイメージ。スクリーンのサイズは映画館並みで、参列者の記憶に残るセレモニーが演出できる。この設備は、道内では同社と札幌の葬儀場との二カ所だけが導入している。周辺の機材を含め、一式で一千万円ほどもするが、同社では写真十点までは無料で利用できるサービスを実施中だ。

また二階のロビーでは、ケーブルテレビ「ポテト」が視聴できる。小さな子どもが泣いたときなどには、子ども向けの番組を見せることが出来て、好評だという。

現在、市内の葬祭業界では、やはりベルコが強いほか、他にも十七の登録業者があって競走が激しい。淤見社長は「葬儀のあり方はお客さんが決め、葬儀屋は黒子に徹してお手伝いする時代。お客さんとの間に思いのズレがあっては生き残れません」と消費者ニーズの動きに徹底して対応していく構えだ。