自動車の内外装部品などを製造している上原ネームプレート工業(本社・東京)の旭川事業所(工業団地一ノ二)が、敷地内のビニールハウスでイチゴを栽培している。生産品は市内のホテルなどに出荷し、味の良さが好評だ。

 同社はホンダの自動車のエンブレムなどを製作しているメーカー。〇八年のリーマンショック以降、自動車の販売台数が落ち込んだことから、他にも収益を生む事業をと考え、農業に着手した。

 現在、二百坪のハウスで「とちおとめ」の苗が六千六百本栽培されている。二十四時間稼動のメッキ工場から発生する廃熱を取り込んでおり、これで暖房費を節減することが出来る。収穫は十二月から六月頃まで可能だ。

 ボイラーによる直接暖房に比べ空気が澱まないのが特長で、同社の渡辺哲也課長は「空気がきれいなせいか、病気が発生していない。ただ同時にハダニにとっても快適になるため、その対策が上手くいけばさらに良い収穫ができるはず」と話す。利用している廃熱はまだほんの一部で、今後さらなる展開が期待できるという。

 同事業所では〇九年(平成二十一年)九月に初回のイチゴ苗を植えた。以来、工業的な観点を取り入れながら、温度を中心に様々なデータを収集してきた。岡田東洋司所長は「イチゴ栽培は試みの一つ。最終的には工業の要素をマッチングさせた農業を目指している。イチゴは気温が高くなり過ぎると収穫できず、温度をどこまで管理できるかがカギ。地下に保存した雪をハウス内の冷却に使い、収穫時期を延ばすことも視野に入れている。これが上手く行けば盛夏でも収穫できるのではないか」としている。

 市内で食材として同事業所産のイチゴを使っているのはロワジールホテル。「東旭川産完熟イチゴ」としてレストランなどで出している。

 岡田所長は「市場に流通させるイチゴは通常まだ白いうちに収穫するが、当社は完熟の状態で収穫している。ビタミンCの含有量が一〇%ほど向上するというデータも得られている。ぜひ完熟イチゴの美味しさを知ってもらいたい」と話している。

 ハウス内ではイチゴ狩りが楽しめ、完熟ならではの味を堪能できる。大人(中学生以上)千二百六十円、小学生六百三十円、幼児(三歳以上)四百二十円。午前十時~午後四時。問い合わせは同社(℡36―1777、土日祝日を除き午前八時半~午後五時四十分)へ。