戦中戦後の混乱期、孤児となった一人の少年がお菓子へのあこがれを心の支えに、様々な人と出会いながら成長していく姿を描いた映画「エクレール・お菓子放浪記」の上映会が二十八日(金)、旭川市公会堂(常磐公園内)で開かれる。

 東日本大震災前の宮城県石巻市などでロケが行われていて、映画には津波によって壊滅的な被害を受ける前の歴史的な建物や町並みが映し出されている。上映会を企画した実行委員会は、収益の一部を被災地復興のため寄付する。

 原作は作家西村滋さんの自伝的小説「お菓子放浪記」。盲目の少女の一生を描いた「ふみ子の海」(二〇〇七年)の近藤明男監督がメガホンを取った。主演は、吉井一肇。いしだあゆみ、林隆三、高橋恵子らが出演している。

 物語は、太平洋戦争真っ只中の一九四三年(昭和十八年)に始まる。孤児院を脱走したアキオは、空腹に耐えられず「あられ」を盗んで逮捕された。刑 事の遠山がくれた、初めての菓子パンの甘さに心を奪われるアキオ。感化院に送られ、指導員から暴力的な軍事教育を受けるアキオの、希望のない日々のわずか な救いは、教師・陽子が歌う「お菓子と娘」だった。

 養子になった家で重労働をさせられたり、旅回りの一座に居場所を見つけたりするアキオだったが、厳しさを増す戦況の中で、優しくしてくれた人たちは、次々に命を落としていく。

 そして、終戦。心を閉ざして社会の片隅で生きているアキオを救ったのは、やはり「やさしい心の人」と「お菓子が持っている不思議な力」だった。

 映画には、成長したアキオの心のより所の風景として、「スイーツロード」と呼ばれる砂川市が登場する。地元の洋菓子店などでロケが行われ、市民がエキストラとして参加した。

 上映は、午前十時半、午後二時、同六時半の三回。チケットは、一般千円(当日千五百円)、小中高校生八百円(同千円)。あさひかわ新聞のほか、こ ども冨貴堂、冨貴堂各店、コープさっぽろルミネ東光、シーナ永山、旭川青年大学、旭川市民劇場、旭川音楽鑑賞協会、北海道新聞各販売所、旭川洋菓子協会加 盟の各店などで扱っている。

 問い合わせは、実行委員会事務局の熊谷商店(℡22―7351)まで。