3・11から一周年の十一日、岩内原発問題研究会代表の斉藤武一さん(59)の講演会が勤労者福祉会館で行われた。実行委員会(苅谷重吉代表)の主催。二百六十人ほどが来場した。

 岩内町は泊原発から約五㌔の場所に位置する。同町在住の斉藤さんは、泊原発の温排水が海に与える影響を調べるために、泊原発が運転を開始する十年 前の一九七八年(昭和五十三年)から、岩内港で海水温の測定を続けている。〇三年(平成十五年)に長年の調査の日々を綴った著書「海の声を聞く」を出版。 同年に論文も公表し、泊原発の温排水の影響で海水温が〇・三℃上昇したと発表している。

 斉藤さんは講演をわかりやすくするため、手作りの紙芝居を使っている。この日は四つの紙芝居を用いて、泊村はがん死亡率が道内自治体でワーストで あること、泊原発が不安定な地盤の上に建設されている実態など危険性を訴えた。また道内で雨の多い都市ほど乳がんの死亡者が多いことをグラフで示し、雨に 多く放射性物質が含まれていると説明した。

 岩内町では、かつて二万八千人ほどだった人口が、現在は一万四千人ほどになっている。過疎にもかかわらずビジネスホテルが建設中で、廃炉が決まった場合に向こう三十年ほど関連作業での需要が見込めるからだという。

 斉藤さんは「多くの人が原発に経済依存して生活している一方、その依存から脱しようと行動する人も多くなってきた。現在は五分五分のところで、地元は静かに変わりつつある」と説明していた。