旭川在住で「黄粉引」の技法で全国的に知られる陶芸家、工藤和彦さん(43)が九月、フランス・リヨンで開かれた陶器市に出展販売した。

 リヨンで毎年開かれる陶器市は今年で二十八回目。出展するには写真などでの書類選考と抽選を経た上で、陶芸を職業としていることを証明できる書類(納税の記録など)を提出する必要があるなど、一定以上の水準が求められる。毎年ヨーロッパ中から百四十人のプロの陶芸家が集まるが、これまで日本人の参加はなく、工藤さんが初めて。

 陶器市は二日間にわたって行われた。工藤さんの器の値段は、日本からの輸送代を考慮した分、周囲の陶芸家たちの作品と比べると高くせざるを得なかったが、売れ行きは予想以上に好調で、湯呑みとマグカップは完売した。また、フランスではカフェオレなどを飲むのに取っ手のない碗を用いるため、飯茶碗も全てが売れた。

 一方、皿はあまり売れなかったという。工藤さんはその理由を「欧州では白い磁器の皿を使うことが多く、ナイフを使うと傷が付く陶器の皿は、主として装飾品とされているから」と分析している。

 唯一の日本人である工藤さんのブースには、ヨーロッパの陶芸家たちが次々と訪れて交流し、作品を買っていったという。工藤さんは「品物に力がなければ無視されて終わりだが、そうではなかったので、新たな自信がついた」「会話は片言の英語だったが、陶芸家同士はお互いの力量が分かればそれで深い会話になる。自国の美意識があり、なおかつ自分独自の味を持っている作家が尊敬されるのだと感じた」と手応えを話す。

 今後の海外への進出については、「売れる器に迎合しては駄目で、日本特有の雰囲気を残していないと評価されない。国内でのしっかりとした活動が大前提で、その上での海外活動だと改めて分かった」と話していた。

 現在、陶器市で工藤さんの作品を見たジュネーブとパリのギャラリー経営者から、展示会の依頼が来ているという。