「地元密着人情銭湯」を掲げるフタバ湯(春光五ノ七、加地経郎さん経営)が今年一月から、春光台のお客の送迎を再開した。

 春光台地区には銭湯がないため、創業間もない二〇〇五年(平成十七年)から、同地区に最も近い銭湯としてマイクロバスによる送迎を始め、十年間続けた。三年前、建物を増改築し、営業時間を早めたことなどから手が回らなくなり、昨年五月、やむ無く中止。その後は、春光台からの入浴客はほとんどなくなっていた。

 大晦日、加地さんは「一年の垢(あか)を流したいだろうなぁ」とふと思い立ち、かつての顧客に電話を入れたところ「ぜひに」と即答され、バスを走らせた。

 その時、「バス代を出すから、これからも来てくれないだろうか」と懇願された。そこは「人情銭湯」、イヤとは言えず、これまでと同様に無料の送迎を快諾。週一回、土曜日午後一時前に高台小学校近くの市営住宅まで迎えに行き、入浴を終えた約一時間後に送り届けている。

 迎えのバスから降りてきた七十歳代の女性は、急ぎ足で脱衣所に向かいながら、「フタバ湯さんがまた迎えに来てくれるようになって、本当に助かっています」と笑顔で答えてくれた。

 バスを利用する客のほとんどが市営住宅に一人住まいのお年寄りだ。バスの送迎を中止していた間、「『お湯がもったいないので、タライに湯を張って入っていた』とか『シャワーだけで済ませていた』と話していた。要望がある限り、できるだけ続けたい」と加地さんは心に決めている。

 フタバ湯では、この時期恒例の野菜や果物の販売も行った。今年は「和寒の越冬キャベツ」が一個百円。大好評だった。