西川徹郎記念文學館(七ノ八)はこのほど、第四回西川徹郎記念文學館賞の授賞作を決定し、発表した。

 同賞は、日本の詩歌文学や思想哲学の振興を願い、同館が創設した文学賞。第四回の同賞を受賞したのは、哲学者・野家啓一(のえ・けいいち)著『はざまの哲学』(青土社)と、文芸評論家・綾目広治(あやめ・ひろはる)著『惨劇のファンタジー 西川徹郎 十七文字の世界藝術』(茜屋書店)の二作。

 野家氏は、一九四九年、仙台市生まれ。東京大学大学院博士課程中退。現在、東北大学名誉教授・総長特命教授。著書に『物語の哲学』(岩波現代文庫)、『パラダイムとは何か』(講談社学術文庫)ほか多数。選出理由は、「我々は如何にして〈危機としての未来〉を生きることが可能か。著者はその回答の一端を東北の詩人宮澤賢治の〈詩〉の中に見出そうとしている。すぐれた〈詩〉はまさに生存の必然としての発語であり、内発する初源の聲である」など。

 綾目氏は、一九五三年、広島市生まれ。京都大学卒。現在、ノートルダム清心女子大学教授。著書に『松本清張 戦後社会・世界・天皇制』(御茶の水書房)、『小川洋子 見えない世界を見つめて』(勉誠出版)ほか多数。選出理由は、「西川徹郎が創始した実存俳句と世界の思想・哲学・文学・詩学・表現論などを対峙させ、西川文学の世界的出帆を予告している」などとしている。

 第四回西川徹郎記念文學館賞の授賞式と祝賀記念会は七月二十日(土)午後六時から、アートホテル旭川(七ノ六)で開かれる。二人には同館の顧問で書家の久保観堂の手による西川の句が正賞として、また副賞の十万円が贈られる。

 授賞者二人による講演会が同日午後一時から、同文學館で行われる。野家氏が「『物語の哲学』と西川文学」と題して、綾目氏が「西川文学と世界思想」と題して話す。俳人西川が生まれた芦別市にある地名にちなみ「新城峠大學」と名付けた市民講座としての開催。受講無料。問い合わせは、同文學館(TEL25―8700)へ。