地域まちづくり推進協議会の合同研修会が六日行われ、旭川市立大学保健福祉学部の大野剛志教授が「被災地から学ぶ、これからのまちづくりのあり方」と題して講演した。一月一日に能登半島地震があったことから、参加者約七十人が熱心に聞き入った。

 大野教授とゼミの学生らは二〇一一年の東日本大震災による被災の現状を知るため、これまで岩手県陸前高田市、釜石市、山田町を訪れ、視察や調査を実施。また一八年の北海道胆振東部地震で被害の大きかった厚真町でも同様の調査を行ってきた。その調査結果をもとに、大野教授は、被災地からの学びや、これからのまちづくりに活かすヒントについて話した。

地域づくりのあり方
自分たちの意見・提案を

 山田町では役場が被災したため行政組織が全く機能しなかったが、町内会が代わって行うことで、他のまちより復興が早かった。障がい者の個人情報が限られていたことから、被災者を探し出すのに困難さを伴った。また避難所での集団生活に馴染めない障がい者のための福祉避難所が必要。

 仮設住宅での生活が長引くにつれ、ストレスや生活格差の拡大などの問題が出てくる。心のケアや支え合いのコミュニティ、居場所づくりが求められる。大野ゼミは人々が集まり触れ合える場を作ろうと「餅つき」を行った。

 仮設住宅から災害公営住宅に移転する時、仮設で共同生活を送っていた人たちと一緒に入居できなかったためコミュニケーションが取りづらく、特に高齢者は孤立する。

 岩手県では、震災当時と現在ではボランティアが十分の一に減った。震災当時は「ガレキ処理」、今は「心のボランティア」が求められている。
 「自分たちが地域づくりのあり方に意見を出したり、提案しなければ、安心して暮らせるまちはつくれない」という声に納得した。シンクタンク任せではいけない――などと語った。

隣近所・町内会のコミュニティ作りを

 これらの調査結果から、災害から身を守るために、私たちがしておかなければならないことは、①隣近所や町内会レベルで「顔が見える関係性(地域の人間関係)」を作っておくこと、②高齢者や障がい者など介助が必要な人が、避難時に地域でサポートしてもらえるよう、個人情報の提供をいとわない、信頼できる人間関係の構築と支援計画などが求められると、コミュニティの重要性を強調した。

 そのため、私たち「足元」の隣近所・町内会を作り直すため「地域の防災をみんなで考える」というテーマで、住民みんなで課題を共有することが、問題解決やまちづくりに活かすことができる、と提言した。

 この後、市防災安全部防災課が「災害に備えて」をテーマに、非常持ち出し品や日ごろの備えなどについて説明した。(佐久間和久)