樹木大量伐採
反対署名2万人

 「常磐公園の自然を考えるなかま」(高野克子代表)の十周年記念フォーラムが二日、神楽公民館(神楽三ノ六)で行われた。


 同会(当時、平田一三代表)は、二〇一一年に発足した。石狩川の堤防を緩斜面化するため、常磐公園の堤防に生育していた樹木を大量に伐採する計画に対し、「公園の風景を守る」ことを目的に誕生した。

 

 計画では、堤防内の樹木のほとんどが伐採されることになっており、公園の象徴的樹木だったポプラの木々も対象になっていた。同会のほか計画に反対する「ときわの森ファンクラブ」(吉木俊司代表)などの団体と共同で行った伐採反対の署名運動で、二万筆余が集まった。また市民から意見を聞く、パブリックコメントでも九七%が樹木の大量伐採に反対だった。

 ところが、市は検討懇談会や市民説明会を開きつつも、一四年に大量の樹木を伐採。千鳥ヶ池畔の売店も撤去され、一五年に工事を完了した。

 同会は工事完了後も樹木の伐採による影響のデータを集めるための定点観測や、四季折々の観察会などの活動を続けてきた。

「続けてこられたのは、何よりの財産」

 フォーラムで、高野代表は「春光台に住んでおり、子どもたちの遊び場となっている公園にパークゴルフ場を造る計画に反対する運動に取り組んでいました。結局、ゴルフ場は造られてしまったのですが、今度は常磐公園の樹木を大量に伐採するというので、心から怒りが湧いてきました。常磐公園の見学会に集まった市民から、『このまま見過ごしていいのか』という声が出て、できたのが『考えるなかま』です。結局、大量の樹木が伐採されましたが、解散せず皆さんと一緒に十年以上続けてこられたのは、何よりの財産です」と挨拶し、亡くなった方々の名前をあげながら、感謝の意を表した。

 記念講演では、旭川郷土史ライター・語り部の那須敦志さんが「常磐公園の今昔とこれから」と題して話した。公園の成り立ちは、北からの脅威に守りを固めるため置かれた師団と役所とギクシャクとした関係の改善のため、師団が公園を現在地に造ることを提案したことや、公園内にはかつて動物園があり、サルやタヌキ、ガチョウ、キツネ、ウサギ、ワシなど種々の動物がいたことなどを紹介。北彩都ガーデンから買物公園、七条緑道、常磐公園を結ぶ緑の線が、将来の旭川にとって重要になると、将来イメージ像を語った。

改修めぐり市民と行政が
喧々諤々の議論

 最後に高野代表と寺島一男さん(大雪と石狩の自然を守る会代表)が、これまでの活動をスライドを使って振り返った。

 観察会で園内の鳥や樹木などを案内している、獣医師の武藤健一さんは「私が数えたところ、百種類ほどの鳥が来ている。石狩川に接している、この公園は渡り鳥にとって、なくてはならないところ」と渡り鳥にとって、移動の大動脈の一つになっていると強調した。

 園内でコウモリの観察会を開いている出羽寛さん(旭川大学名誉教授)は「園内にはクマゲラやオオタカ、オジロワシ、アカゲラなどの貴重な鳥たちの姿を見ることができる。生物の観点から樹木を見る必要がある。木々は切られてしまったが、この問題で市民の関心が向き、行政に自然調査を実施させたことは、成果の一つ」と運動を振り返った。

 寺島さんは「常磐公園は東京の日比谷公園と同程度の大きさを誇る。公園の改修をめぐり、市民と行政が、これほど喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしたことはかつてなかった。工事完了後も、定点観測や観察会などの運動を続けてきたことに敬意を表する」と同会をたたえた。(佐久間和久)